【ライブレポート】ソロアーティストとしてTAEMINが見せた、新たなる到達点 | Numero TOKYO
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【ライブレポート】ソロアーティストとしてTAEMINが見せた、新たなる到達点

SHINeeのTAEMINによるソロ公演「TAEMIN SOLO CONCERT : METAMORPH in Japan」が2024年3月8日(金)・9日(土)・10日(日)の3日間にわたり東京の日本武道館にて開催された。2月には、SHINeeとして6年ぶりの東京ドーム公演を成功させ、グループとしてもソロアーティストとしてもさらなる高みに到達したTAEMIN。ここでは2日目のライブの模様をレポートする。

身体にずっしりと響く重低音のビートが鳴りわたるオープニング。巨大なビジョンの間から、高く宙に浮いた舞台装置に立つTAEMINの姿が!

撮影:田中聖太郎

キャップを深く被り表情はわからないが、割れんばかりの歓声が湧き上がる。最新4thミニアルバム『Guilty』からの「Rizzness」でドラマティックに幕開け。すると、TAEMINが立つ舞台がゆっくりと傾き始める。危ない、このままでは滑り落ちてしまう!とハラハラするのも束の間、直立不動のまま真っ逆さまに。それでも歌い続けるTAEMIN。私たちは今とんでもないものを目撃している……。これから途轍もない何かが始まろうとしているのを確信させる、衝撃的なパフォーマンスだった。

撮影:田中聖太郎
撮影:田中聖太郎

ピアノの美しい旋律が流れ、厳かな雰囲気のなか2曲目の「Advice」に突入。腹部があらわになったアシンメトリーな衣装が、繊細なダンスを引き立てる。しなやかでありながら力強く、重力を感じさせないムーブに目が釘付けに。続く「Black Rose」では、妖艶な魅力で一気にTAEMINの世界に引き込まれる。

撮影:河村美貴(田中聖太郎写真事務所)

「イ・テミン! イ・テミン!」というシャヲル(SHINeeファンの名称)たちの熱烈なコールとともに、ダンスブレイクを経て一気にテンションがクライマックスに達した「Criminal」。上着を脱ぐと無駄のない上半身が現れ、その姿さえも演出の一つとなってステージを完璧なものにした。ここまで20分ほどひっきりなしにパフォーマンスを行った後、最初のMCに入る。

「すみません、ちょっと……隠して、整理して。丁寧な姿のTAEMINで挨拶したいです」と言いながら白いシャツを纏い、「会いたかったですかー!? めちゃくちゃ会いたかったですね。ソロコンサートといえば何年ぶりですか? 武道館では7年ぶりで、TAEMINとして初のソロコンサートをしましたが、その記憶を思い出して、本当に懐かしい場所だと思います」と振り返った。「皆さんどんな気持ちを持ってきましたか?」「どの曲が一番好きでしたか?」としきりに客席に問いかける様子も印象的。トークになると、打って変わって愛嬌たっぷりでチャーミングな顔を見せるのもTAEMINの魅力だ。

撮影:田中聖太郎
撮影:田中聖太郎

ダンサーたちを引き連れて豊かな表現力で魅せる「유인 (Impressionable) 」、冒頭でも登場したステージの上で繰り広げる「Heaven」、「Strings」、ハンドマイクで情熱的に歌い上げる「제자리 (Not Over You)」と続き、単なるコンサートの域を越えた総合芸術としてのクオリティの高さを見せつけた。

撮影:河村美貴(田中聖太郎写真事務所)

2回目のMCでは、客席から口々に聞こえる言葉をキャッチして、「大好き? 僕も大好き」と答え、韓国語で「사랑해요(愛しています)」と続けると、そのまま韓国語でトークを始めてしまう場面も! 「集中して、TAEMIN」と自ら言い聞かせるお茶目な姿に会場中がときめいた。「次の曲は衣装をちょっとだけチェンジします」と、舞台袖で黒いジャケットとグローブを身につけてから、次のステージへ。

『Guilty』からの一曲「She Loves Me, She Loves Me Not」、「Light」、そして日本語バージョンの「Famous」を披露し、軽やかでダンサブルな楽曲でポップスターの風格を漂わせる。「괴도 (Danger)」ではイントロから会場が沸き、「みんな知ってる曲ですよね、歌いましょう!」とTAEMINも声を上げた。シャヲルたちの盛大な掛け声も曲の一部となり、武道館が大きく揺れ、一つに!

撮影:田中聖太郎

ダンサーたちのステージを挟み、「The Rizzness」のパフォーマンスムービーが大画面で流れ、次のセクションへ。またしても中に浮いたステージで、今度は逆さまになった状態からスタート。到底普通の人間に可能なこととは思えない。朱赤のような鮮烈な色の服に身を包み登場するTAEMIN。曲は「Door」の日本語バージョン。しかもステージを降りるまで目隠しがされており、視覚を遮られた状態でのパフォーマンスとなった。

撮影:河村美貴(田中聖太郎写真事務所)

撮影:河村美貴(田中聖太郎写真事務所)

そして、待ちに待った「Guilty」へ。もはや言うまでもなく、観る者を圧倒するまでの芸術的な完成度。

撮影:河村美貴(田中聖太郎写真事務所)
続く「MOVE」でも、アーティスティックなTAEMINの側面を堪能。MCでは、「皆さん楽しんでいますか? 盛り上がっていますか?」と投げかけ、昨年からパフォーマンスディレクターのファン・サンフン氏と、今までに見せたことのないTAEMINを見せようと、リフトの舞台装置やさまざまな演出を準備したと語った。そのコメントからも、常に進化し続け、新しい姿をファンに見せたいという絶え間ない向上心が見てとれる。 「次の曲は落ち着いて、皆さんに聴かせたい曲です」と紹介し、「오늘 밤 (Night Away)」へ。心地よいビートとメロディに身を任せ、続く「Blue」でも、伸びやかな歌声で穏やかな表情を見せた。

撮影:田中聖太郎
撮影:田中聖太郎

アンコールは、「イ・テミン! 大好き!」という愛が溢れるコールが止まないなか、「이데아 (IDEA:理想)」で登場。淡いペールグレーのセットアップに、無数のクリスタルが輝く。

「皆さんアンコールありがとうございます! もう一回聞かせてもらえますか?」と無邪気にコールをリクエストし、会場が大きな声援でそれに応えると「いいねぇ」と満足げな様子を覗かせた。

「皆さん、今日は大切な時間になりました? 楽しかったですか? 僕にとっても大切な思い出になってすごく楽しかったです」と語り、「僕がここまで、こうしてずっと行けるのは、皆さんのおかげですけど、いつも皆さんからもらうことばかりで、うれしいけれど、ごめんなさい(笑)」という予想外のコメントが。今までもずっとファンが支えてくれること、周りに良い人がいることに感謝をしながら、「これから歩んでいくことも見守ってください」と締めくくった。

撮影:田中聖太郎

そんな感謝の気持ちを込めて歌った、日本オリジナル楽曲の「世界で一番愛した人」。桜のような紙吹雪が舞い落ちる幻想的な景色の中、「みんな本当に大好き! これからもよろしく!」と言い放ち、さらに「これからも、ずっとそばにいて」とつぶやき、「I Think Itʼs Love」の歌詞「あなたが必要だ」というフレーズを熱唱した。ラストは、幻想的な光が差すなか「Identity」で幕を閉じ、ボーカルの面でも確固たる実力を証明。去り際も美しく、光とともに姿を消していったTAEMIN。その姿には神聖なものさえ感じられ、まるで一本の映画を観たかのような濃い体験だった。

SHINeeとしてデビューして間もなく16年。それでもMCで「緊張しています」と謙虚な姿勢を見せながら、ファンを喜ばせたい一心で、常に新しいチャレンジに挑み、とどまることのない進化を遂げるTAEMIN。そこからわかるのは、パフォーマンスに対しても、ファンに対しても、誠実な心で真摯に向き合う姿。若い世代のK-Popアーティストの多くが、ロールモデルとしてTAEMINの名前を挙げるが、彼らが憧れる理由に納得せざるを得ない、圧巻の公演だった。これからまた新しいフェーズへと進む彼のさらなる飛躍が、今から楽しみでならない。

 

Text: Yukiko Shinto

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JUNE 2024 N°177

2024.4.26 発売

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