高屋永遠の代表作から新シリーズまで総覧する個展「It calls: shades of innocence」
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高屋永遠の代表作から新シリーズまで総覧する個展「It calls: shades of innocence」

東京・代官山のルーフミュージアムにて、高屋永遠の個展「It calls: shades of innocence」が開催中。代表的なシリーズから最新作まで70点以上の作品が公開となった。

無題(存在するとは別の仕方で)/ Untitled (Otherwise than being ) (2024、顔料、油、麻キャンバス、H652×W455×D20mm)
無題(存在するとは別の仕方で)/ Untitled (Otherwise than being ) (2024、顔料、油、麻キャンバス、H652×W455×D20mm)

高屋永遠は1992年東京都生まれ。国内外の土地や植物、化粧原料などから自作した色材を用いて作品を制作。鑑賞者が作品の前に立つ時、自らを「大いなる自然の循環」の一部として感じられるような、その空間にただ佇むことができるような装置として、高屋は絵画作品を制作している。

こうした没入的空間の探究は、2017年からの「青のシリーズ」より開始。自ら色材を練って画材をつくることで、工業的に規定されたレディメイドな絵の具がもたらす制限を取り払い、豊かな階調の色彩によって独自の奥行きを実現。鑑賞者と共有し得る空間の経験を作り出すために必要不可欠な手法であり、それによって初めて、鑑賞者を日常から切り離された精神の空間へと誘う。

5連作品「仙郷<泉> / Immortal landscape (Fountain)」より (2024、別府市 血の池地獄から採取した泥、顔料、油、麻キャンバス、H666×W242×D18mm)
5連作品「仙郷<泉> / Immortal landscape (Fountain)」より (2024、別府市 血の池地獄から採取した泥、顔料、油、麻キャンバス、H666×W242×D18mm)

こうした色の探究は、他者や国内外の土地から色材を得て、自らの外にあるもののエネルギーを作品に取り込むことにも繋がっているという。資生堂みらい研究グループとの共同研究によって化粧品顔料である「パール剤」を画材として用いる手法を身につけたことにより、絵画空間の密度や奥行き、繊細さはさらに増し、また熊野の那智滝、別府の間欠泉を訪れた際には「大いなる自然の循環」を経験したことも、さらに作品探究を深める契機となったそうだ。

罔象<開闢> / ∞: emergence(2024、パール材、顔料、油、麻キャンバス、H1455×W1455×D30mm)
罔象<開闢> / ∞: emergence(2024、パール材、顔料、油、麻キャンバス、H1455×W1455×D30mm)

魂の理由 / Where the soul has arrived.(2023、パール材、顔料、油、麻キャンバス、H1455×W1455×D30mm)
魂の理由 / Where the soul has arrived.(2023、パール材、顔料、油、麻キャンバス、H1455×W1455×D30mm)

本展では「罔象」シリーズを新たに発表。いわゆる事物としての自然(ネイチャー)の描写ではなく、自然の奥にある自然、古来より伝わる仏教的な意味での自然(ジネン)であり、混沌と無限を有した自然そのものの経験を表現しようと試みたものだ。
自らの画風にたどり着く転機となった「青のシリーズ」から、作家の現在地を示す本シリーズまでの総覧。そのあゆみにぜひ注目を。

※掲載情報は3月8日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。

高屋永遠 個展「It calls: shades of innocence」
会期/2024年3月2日(土)〜4月8日(月)※不定休
会場/ルーフミュージアム 1F・2F
住所/東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1
時間/11:00〜19:00
休館/不定休
URL/lurfmuseum.art/

Text:Akane Naniwa

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