新たなビズスタイルを通して“装い”の定義を見直す「Prada」2024秋冬メンズコレクション
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新たなビズスタイルを通して“装い”の定義を見直す「Prada」2024秋冬メンズコレクション

プラダ(PRADA)は、2024年秋冬メンズコレクションを現地時間の1月14日にミラノで発表。ランウェイ形式で行われたファッションショーのフロントロウには、ブランドアンバサダーを務める俳優の坂口健太郎をはじめ、韓国のガールズグループ、エスパ(aespa)のカリナ、トロイ・シヴァン、イ・ジェウク、ジェイク・ギレンホールなど数多のセレブリティが顔を揃えた。

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“人の本来性”や“人間性”を意味する「HUMAN NATURE」と題された本コレクション。人間にとって基本的な何か、とりわけ自然のサイクルと共にあり続けようとする感情的な本能をテーマにしたもので、有り体に言えば“自然回帰”であり、どこに住んでいようとも人々は環境や季節と共にあるという考え方をメンズクロージングに反映したものだという。

会場のエントランスは、パソコンやデスクが整然と並ぶオフィスを模した空間に。その先に続くランウェイの透明な床下には、草木や苔、小石などが敷き詰められ、川のように水まで流れる箱庭のような趣を演出している。観客席には無機質なオフィス用のチェアを並べてオフィス空間と自然の風景を並置することで、共存する2つの異なる世界を表現した。

フランスの現代音楽家 ベルナール・パルメジャーニの楽曲『Question de temps』の不穏なストリングスが鳴り響くなか、ファーストルックは淡いイエローのクレリックシャツにスーチングパンツを合わせたシンプルなスタイル。しっかりとタイドアップしつつも、水泳帽のようなぴったりとした真っ赤なビーニーが目を惹く。後続するスタイルも、暖かみのあるツイードやふっくらとしたウール素材のスーツにビーニーを合わせた異形のビズスタイルが披露された。どれもジャケットのゆったりとしたボックスシルエットにラフ・シモンズらしさが伺えるものの、トレンチコートなどの外套は、縦のラインを強調したコンパクトなシルエットに仕上げてあり、オーセンティックなアイテムを新鮮に見せている。また、タイドアップした正統派のスーツスタイルでも足元は軽やかなサンダルでハズしたり、カラフルなビーニーや薄手のバラクラバを多用することで、全体のバランスに変化を付けていた。

イタリアのハードテクノデュオ、999999999の『X0004000x』にBGMが変わると、コントラストカラーを組み合わせたアンサンブルのニットやタイトなタートルネックのトップス、共地のネクタイと合わせたデニムのジャンプスーツなどが登場。コレクションを通して用いられたビーニーと組み合わせたスクエアなアイウェアがインテリジェンスを醸す。他にも、ラフらしいビッグサイズのボンバージャケットや襟元をファーで切り替えたレザーコートは金ボタンでモダナイズ。セーラー帽のようなヘッドウエアも含めてミリタリーやマリンルックの要素も随所に散見された。

小物では、レザーを編み込んだ太幅のベルトやヒール部分をカットしてフラットソールに仕上げたレザーの短靴、ストラップをあしらった大容量のトートバッグなども目を惹いたアイテム。トライアングルロゴを配したバッグパックは、前述のレザーベルトを組み合わせて斜め掛けできるようにするなど、ブランドを代表するアイコンピースにも繊細なアレンジが施されている。シグネチャーのひとつでもある「リナイロン」素材のバッグ類は、目を凝らすと同系色でアブストラクトなプリント柄が施されており、実際に製品化された場合はかなり人気になるだろう。

本コレクションで発表されたルックは、オフィススペースと自然環境に象徴される「内」と「外」でそれぞれ異なる感情を反映し、適応するものだという。そこには、私たちを取り巻く世界と繋がりたいという、人間の深く本質的な欲求がシンプルに主張されていると、ラフと共にブランドを指揮するるミウッチャ・プラダは語る。四季の移り変わりと歩調を合わせた自然のリズムに沿って装いを決める。ドレスやミリタリー、ユニフォームといったメンズクロージングの基本的なエレメントを踏襲した本コレクションは、ファッションのファンタジー的な側面とはまた違う「装うこと」の意味や定義を改めて考えさせるものであった。

プラダ クライアントサービス
TEL/0120−45−1913
URL/www.prada.com

Text:Tetsuya Sato

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DECEMBER 2024 N°182

2024.10.28 発売

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