河原シンスケ、銀座もとじにて新作発表。 うさぎと京丹後の職人技との出会い
「usagi bon ごはん」連載でもおなじみ、パリ在住のアーティスト・河原シンスケ。2023年12月1日(金)より、銀座もとじにて、うさぎをモチーフにした羽織や織帯、紋意匠の白生地の新作を発売する。日本では京都府・丹後地域にアトリエを構えており、そこでの職人との交流が、今回の新作へとつながっているという。
丹後独特の織りや撚糸の技術を用いた大麻布の白生地に、地染めを施した羽織。そして「大兎が松に乗っかって、竹梅を眺めている絵を描きたくなりました」と、河原シンスケが直接描いた。前見頃のモチーフの三角形は、兎の耳と紋の発想から。もちろん一点もの。
円になって遊ぶ七羽の兎と、それを眺める一羽がなんとも愛らしい帯は、「兎の耳と貝の殻」と名づけられた。そして京丹後で出会った織元「民谷螺鈿」の織技法と引き箔により、一本一本手作業で螺鈿が織り込まれている。
「和紙に螺鈿(らでん)を貼り付けて、それを数ミリの糸にし、絹糸と織りあげるという、気の遠くなる様な技術に圧倒されたのが数年前の民谷螺鈿との出会いです」という。この織九寸帯では、かすみの部分が螺鈿で表現されている。
こちらは丹後ちりめんの織元が織り上げる紋意匠白生地。波の上を自由に転がり、たゆたう、鞠の様な兎が描かれている。色無地として、お好みの色に染め上げ、洒落紋をつけて楽しむのもおすすめ。
「うさぎは世界中、そしてどんな時代にも存在して来た、我々と近い存在。フランスの16世紀からのオービュッソンのタペストリーにも、日本の平安時代の鳥獣戯画にも。」という河原シンスケ。新作発表に寄せたコメントから、作品のモチーフである兎との出会いを一部ご紹介。
「僕が初めてパリのシャルル・ド・ゴール空港に降りたったのは80年代初頭。その頃はターミナルも一つしかなくフライト数も当然今より格段に少なかった。
窓から少し不安な思いでフランスの土地を眺めていると、野原の様な滑走路が波打って見える。だんだん着陸のため近づいて来るそこには、ウサギの大群がぴょんぴょんと跳ねていたのだ。こうして初めてのパリで僕を迎えてくれたのはうさぎ達だったのだ。それ以来、僕の作品のインスピレーションソースには、うさぎが欠かせない存在となった。」
世界中で、古来より、人間の近くに存在してきた兎をモチーフに描き続ける、そのきっかけの一端を知り、ますます愛おしく思える。
また、銀座もとじでは、12月16日(土)に河原シンスケを迎え、店主・泉二啓太との対談を開催予定。さらなる制作秘話が聞けるかも。
銀座もとじ 和織・和染
住所/東京都中央区銀座4-8-12
TEL/03-3538-7878
URL/www.motoji.co.jp
ぎゃらりートーク
日時/2023年12月16日(土)19:00〜20:00
会場/銀座もとじ 和織
定員/40名(無料・要予約)
Text:Hiromi Mikuni