折坂悠太(歌)詞集『あなたは私と話した事があるだろうか』
今年、音楽業10周年を迎えたシンガーソングライターの折坂悠太。彼がこれまで歌い続けてきた詞をまとめた(歌)詞集『あなたは私と話した事があるだろうか』がWORDSWORTHより発売された。
2019年、ドラマ主題歌となった「朝顔」、2020年の「トーチ」、2021年にはアルバム『心理』をリリース、2022年には、初の小説『薮IN』から、PARCO MUSEUM TOKYOで初の展覧会『薮IN』で”薮”を出現させるなど、歌とともに、その独自の世界を一つ一つと開いているようにも見える折坂悠太。
音楽業10周年を迎えた2023年は、6月30日より独奏のツアー「折坂悠太 らいど 2023」をはじめ、10月には(歌)詞集『あなたは私と話した事があるだろうか』を刊行した。
これまでの作品、ライブだけで披露する歌や、未発表の新作を含む62曲の詞、そして書き下ろしエッセイが収録されている。いつもは音楽に乗せられる言葉たちが、紙という質感をともなって、発光せずに届けられる。
本に向かう時間は、自分だけのもの。文字を追いながら、好きなリズムで、反芻しながら、どこまでも自由に広げることができる。もちろん閉じることも。
冒頭のエッセイに「私という人間の大部分は、情感を吸い込み、伝達する器官でできている」とある。折坂悠太が差し出す「情感の言語」たち。今は、本という形で、手にとってみてほしい。
「詞をまとめる作業は、長年使ってきた道具に手入れをするような感覚でした。ひときれのパン、ナイフ、ランプ。生き抜くために、今一度持ち物チェック。どうぞ私のかばんを開けて、私をかばんに忍ばせてください。」(折坂悠太)
折坂悠太(歌)詞集『あなたは私と話した事があるだろうか』
価格/¥1,800(WORDSWORTH)
URL/www.goodandson.com/publication/1589/
Official HP/orisakayuta.jp/
Text:Hiromi Mikuni