ブランドのルーツと紐付く、優れた手仕事や職人技に光を当てた「Prada」2024春夏コレクション | Numero TOKYO
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ブランドのルーツと紐付く、優れた手仕事や職人技に光を当てた「Prada」2024春夏コレクション

プラダ(PRADA)は、2024年春夏ウィメンズコレクションを現地時間の9月21日にミラノで発表した。ミウッチャ・プラダが「衣服について哲学的に考察したり、ストーリーを提案することを考えなかった。」と語るように、今回はブランドの歴史と紐付いた職人技にフォーカス。ショーのフロントロウには、ブランドアンバサダーを務める俳優の永野芽郁とTWICEのサナが並び、スカーレット・ヨハンソン、エマ・ワトソン、ENHYPENウェス・アンダーソンといった多数のセレブリティが見守る中、プラダの新機軸を思わせるコレクションが披露された。

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ミウッチャと共にクリエイティブ・ディレクターを務めるラフ・シモンズもまた「今シーズンはクラフツマンシップ、つまりこれらの服に込められた複雑な仕事について語ろうと考えました。」と語っており、詳しくは後述するが、そこにはミウッチャの祖父であり、ブランドの共同創設者であるマリオ・プラダの存在がアイデアの源泉となっている。

 

タイトルや特定のテーマをあえて設けなかった本コレクション。それでも、6月に開催されたメンズコレクションに引き続き “流動性”がキーワードのひとつに。ランウェイの中央にはスライム状の透明な液体が天井から垂れ落ち、カーテンのような役割を果たすと共に“流動性”を表現。

アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『サイコ』(1960)の劇伴にも使用された緊迫感のあるストリングスの調べが響き渡る中、ファーストルックに選ばれたのは、軽やかな仕立てのウールのセットアップ。ジャケットの裾をマイクロミニ丈のショートパンツにタックインすることで、構築的なシルエットを強調している。肩から羽織ったジョーゼットケープには、大柄のドッドプリントがあしらわれており、プラダらしい洗練されたモダニティをプラスした。続いて登場した極薄のオーガンジーとカザル織を用いた「ヘイズ」ドレスは、その名の通り「霞」のようなテクスチャーがモデルの動きに合わせて変化し、空気を孕んだかのような有機的なフォルムを生み出していた。

ブランドに息衝くクラフツマンシップと偉大なる先達の影響は多方に見て取れる。旅人であり、知的好奇心が旺盛だったマリオ・プラダは、1913年に旅行用品やアクセサリーなどを展開するショップ「フラテッリ・プラダ」を設立。旅先で出会ったユニークなアイテムや素材を元に、熟練の職人たちと協力し、バニティケースや置き時計、磁気、バッグなどのオリジナルプロダクツを製作。そのクオリティが評判を呼び、後にイタリア王家の御用達にも任命されたという。現在も使われているサヴォイア家の紋章と結び目をあしらったロープのロゴデザインは、その名残りでもあるのだ。コレクションに話を戻すと、ヴィンテージライクな細かいパッチワークで構成されたレザーのドレスやジャケットも出色。パッチワークの上から精緻なスタッズワークやクリスタルの細工を施してフラワーモチーフを表現するなど、卓越した技巧が随所に現れていた。

“流動性”を具現化したフリンジも目を惹いたディテールのひとつ。フリンジと刺繍を組み合わせたロングドレスをはじめ、スリーブデザインが印象的なブラックシャツは、フリンジを均一に並べることでフラワープリントがシュレッダーにかけたようなニュアンスを創出するなど、様々な形で応用。他にもレザーベルトとメタリックなフリンジをドッキングさせ、プリミティブなスカート的に転用したルックや、フリンジの長さや色の切り替えで襟を擬態したディテールなど、尽きることのない創造性を垣間見せた。

毎シーズン人気のバッグ類に目を向けると、レザーまたはシグネチャーのRe-Nylonを使用したオーバーサイズのトートバッグには、パッチワークのディテールを踏襲。さらに、マリオ・プラダが1913年にデザインしたアイテムを再現したバッグなどもラインナップする。ステッチワークでヒダのような表情を付けたイブニングバッグには、手彫りのユニークな留め具をプラス。これは古い神話に登場する人物の顔をモチーフにしたものであり、ノーブルな佇まいに毒っ気のある遊び心を添えている。

ショーの最後には、ミウッチャの片腕として約40年間に渡り活躍してきたプラダとミュウミュウ(MIU MIU)のデザイン・ディレクター、ファビオ・ザンベルナルディが登場。今回が最後のコレクションとなった“縁の下の力持ち”を表舞台に立たせる粋な演出でショーを締め括った。

ブランド設立から110年にわたる比類のない歴史に裏打ちされた、手仕事やクラフツマンシップに焦点を当てた本コレクション。ラフ自身も「認識されているアイテア、テクニック、素材を、従来とは異なる形で使い、常識を覆す方法でアプローチしています。方向性を変えたり、推し進めたり。それが、プラダのDNAを進化させることにつながっているのです。」と語っているように、手を替え品を替え、多彩なコレクションピースを通して職人技術の素晴らしさを表現してみせた。ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズのタンデム体制になって早3年目。ブランドの圧倒的な充実ぶりが伺える素晴らしいコレクションだったと言えよう。

プラダ クライアントサービス
TEL/0120-45-1913
URL/www.prada.com

Text: Tetsuya Sato

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JUNE 2024 N°177

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