傑作が集結! ジャコメッティ展 @大阪 をアンジェラがレポート
現代アートの発信地、フォンダシオン ルイ・ヴィトン。その所蔵作品に触れる機会をより多く提供することを目指したプログラム「Hors-les-murs(壁を越えて)」の一環となるアルベルト・ジャコメッティ展がエスパス ルイ・ヴィトン大阪にて6月25日(日)まで開催中。モデルとして活躍しながら、現代美術のギャラリー「ペロタン東京」のディレクターも務めるアンジェラがレポートする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年6月号掲載)
人生の痕跡を彫る作家
「失敗すればするほど、成功に近づく。すべてを失い、あきらめずに進むときこそ、わずかな進歩の予感を味わうことができる」
アルベルト・ジャコメッティ
かの有名な細長い身体の彫刻で世界的に知られる偉大な芸術家、ジャコメッティ。彼が創り出す独特なシルエットから観取するものも多くあるが、私の心に一番突き刺さるのは彼が描く「目」と「背中」。
ジャコメッティが描写する男の背中からは、愛と苦悩、情熱と挫折、恐怖と勇気が滲み出ている。その表現からは、作家自身の人生や魂を感じ取られるように思う。
1901年スイスの田舎に生まれ、画家の父親の元で育ったジャコメッティは20歳で芸術界のハブとなっていたモンパルナスに渡り、ベケット、サルトル、ジュネなどと友情を育んで、早くもシュールレアリスト作家として認められた。
しかし、戦争によって世界が破壊され、意味を失っていくなかで、ジャコメッティは抽象表現に限りを感じ始めて、1935年にはシュールレアリスムから離脱し独自のスタイルで人物像、特に人の「まなざし」にフォーカスして制作を続けた。日々人間の宿命と向き合わされる中、仲間たちと実存主義の思想を追究し、人々の孤独、使命感、恐怖、空虚感などを描くために一つの彫刻と何カ月も、時には何年も向き合い続けた。
「芸術の目的は、現実を再現することではなく、同じインパクトの現実を創造することである」。そう語ったジャコメッティが造形するか細い身体は、人生の痕跡とでも言えよう練り跡に覆われており、その背中は顔と同じくらいにその者の人生を物語っているようだ。
※掲載情報は6月8日時点のものです。
開館日時など最新情報は公式サイトをご確認ください。
『アルベルト・ジャコメッティ展 SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION』
会期/2023年2月23日(木)〜6月25日(日)
会場/エスパス ルイ・ヴィトン大阪
住所/大阪市中央区心斎橋筋 2-8-16 ルイ・ヴィトンメゾン 大阪御堂筋 5F
開館時間/12:00-20:00 (エキシビション会期中のみ)
休館日/ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準じます
料金/入場無料
URL/https://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja/osaka
Text:Angela Edit:Sayaka Ito