「Prada」青山店でメディアアートの先駆者 ダラ・バーンバウムの展覧会が開催
プラダ(PRADA)は、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、ダラ・バーンバウムの展覧会「ダラ バーンバウム(DARA BIRNBAUM)」を6月1日(木)から8月28日(月)まで、プラダ 青山店で開催する。
本展のキュレーションを手掛けるのは、2013年までニューヨーク近代美術館(MoMA)でキュレーターを務め、ナムジュン・パイクや久保田成子、ローリー・アンダーソン等の展覧会を企画するなど、メディアアート/サウンドアートを熟知するバーバラ・ロンドン。今回の展覧会ではダラ・バーンバウムによって1979年から2011年までの間に制作された4作品を展観する。
ダラ・バーンバウムは、1946年ニューヨーク生まれ。1970年代半ばからアーティストとしてのキャリアをスタートすると以降、50年近くに渡ってビデオアート、テレビ、音楽、そして発展する通信技術の文化的な交わりを深く掘り下げることで、アートとマスメディアの概念に挑戦し続けてきた。
今回紹介される作品の中でもとくに注目したいのが、ビデオインスタレーションによる《Kiss the Girls: Make Them Cry》(1979)と《Arabesque》(2011) だ。2つの映像媒体を使用した《Kiss the Girls: Make Them Cry》は、70年代にアメリカの芸能人が多数登場して人気を博した長寿ゲーム番組『Hollywood Squares』から抜き出した画像を編集したもの。バーンバウムは、女優たちの型にはまった身振りやおざなりの表情をテレビのコンテクストから切り離すことで、ことさらに協調している。
一方の《Arabesque》は、4つの媒体を使用したビデオインスタレーション。ロマン派の作曲家夫婦であるクララ・シューマンとロべルト・シューマンの結び付いた活動人生とそれぞれが残した異なる功績を考察した作品だ。夫婦が互いに捧げ合った楽曲を第三者が演奏するYouTube動画や、キャサリン・ヘプバーンとポール・ヘンリード主演の伝記映画『愛の調べ』の画面写真などを並列に組み合わせて構成し、さらにクララによる日記を引用。女性芸術家がしばしば歴史から排除されてきたこと、そして人生と芸術の両面において本来値すべき評価を受けられない状況を生み出す要因にもなっている社会や家族、文化の仕組みに焦点を当てたものである。
この他に、現代のミュージシャンやコンポーザーと共同制作したサウンドインスタレーション《Bruckner: Symphony No. 5 in B-Dur》(1995) と、70年代のポストパンクムーブメントに爪痕を残したノーウェイブシーンのライブ映像で構成されたビデオ作品《New Music Shorts》も展示される。この2つのサウンド作品に関しては、他の展示空間と分けた座れるスペースで鑑賞することが可能だ。
迫力あるオーディオと音楽の要素を繋ぐこれらの作品に共通するのは、バーンバウムのクラシックミュージックと現代のポップミュージック両方への興味を表していること。また、テレビやYouTubeに関してだけでなく、音楽の歴史においても重要なクラシックミュージックの作曲家による様々な解釈についてのバーンバウムの批評的な視点、そしてハイカルチャー/ポップカルチャー問わず、文化領域における画一的な女性描写に対する彼女の鋭い洞察が見て取れる。
近年におけるNFTアートの登場やテクノロジーの進化に伴う新興メディアアートの台頭。その礎を築いたアーティストのひとり、ダラ・バーンバウムの展覧会をこの機会にぜひお見逃しなく。
DARA BIRNBAUM
会期/2023年6月1日(木)〜8月28日(月)
会場/プラダ 青山店 5F(東京都港区南青山5-2-6)
入場料/無料
Prada
プラダ クライアントサービス
TEL/0120−45−1913
URL/https://www.prada.com
Text:Tetsuya Sato