「世界がどう見えているか」アンリアレイジ 2023-24年秋冬コレクション
森永邦彦率いる「ANREALAGE(アンリアレイジ)」の2023-24年秋冬コレクションが、2023年2月28日、パリのマドレーヌ劇場で発表された。テーマは「=(イコール)」。ドイツのヤーコプ・フォン・ユクスキュルによる「環世界」を表現した。
ラヴェルの『ボレロ』が流れる中、ステージ中央に現れる二人組のモデルたち。中央で発光器の光を浴びると、服、そして帽子まで、色が変化し、模様があらわれる。紫外線によって色が変化する「フォトクロミック」を取り入れ、フェイクファー、レース、ニット、サテンなど様々な素材の衣服が、まるで魔法のようにカラフルになっていく。
本コレクションのキーワードともなっている「環世界」は、19世紀後半にドイツの生物学者であり哲学者でもあるヤーコプ・フォン・ユクスキュルが提唱した概念。私たち人間が「見て」いると感じる世界は、ほかの生物の捉え方と同じわけではない。例えばミツバチやモンシロチョウは紫外線の光を見ることができるといい、生物それぞれが持つ知覚によって、異なる世界を捉えているという。
そして会場で流れる、繰り返すリズムと旋律が特徴的な『ボレロ』にもまた、オーケストラによる演奏とシンセサイザーを用いた冨田勲バージョンとがまじり合う。
前と後が対称的だったり、後ろのようで前であるデザインを身につけ、二人組で現れるモデルたち。コレクションコンセプトには、 視覚以外の感覚で捉えようとした時、「どちらも前であり、どちらも後ろであるように、前も後ろも同じかたちであることが、当たり前であるかもしれない」とある。
「私たちには世界がどう見えているか。彼らは世界をどう見ているか」。 当たり前だと思っていた自分たちの世界を捉えなおす試み。目の前で鮮やかに色づき、変わっていくことは魔法のようでもあり、世界が広がる喜びにもつながる。会場のゲストからは、幾度も歓声が上がっていた。
ANREALAGE
アンリアレイジ
URL/www.anrealage.com
Text:Hiromi Mikuni