PARCOの新・春夏ムービー、タヌ・ムイノと描く“NEW DEPARTURE” | Numero TOKYO
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PARCOの新・春夏ムービー、タヌ・ムイノと描く“NEW DEPARTURE”PROMOTION

パルコの2023年キャンペーンテーマは“NEW DEPARTURE”。クリエイティブディレクターに、ウクライナ出身の映像監督タヌ・ムイノ(Tanu Muino)を起用し、春夏秋冬と四季を描くムービーを撮影した。これまでポスターを中心とした広告展開をしてきたパルコにとって、ムービーでのキャンペーンは初めての試みとなる。ハリー・スタイルズ、リル・ナズ X、カーディ・BなどのMVなどを手がけ、世界から注目を集めるタヌ・ムイノについて、そして撮影地・マヨルカ島から届いたオフショットとともに、新作ムービーをご紹介。

タヌ・ムイノは、ウクライナ、オデーサ出身の映像監督、フォトグラファー。「Gucci(グッチ)」の『CASA DELLA CULTURA DI GUCCI』をはじめ、ファッションブランドのムービーや、ミュージックビデオなど幅広く手がけている。

ハリー・スタイルズ『As It Was』では4.4億をこえるYouTube再生回数を記録、リル・ナズ X(Lil Nas X)『MONTERO (Call Me By Your Name)』ではグラミー賞の最優秀ミュージック・ビデオ賞にノミネート。こちらも再生回数は5.2億を超えている。そのほか、カーディ・B『up』、フォールズの『2am』のMVなどなど、色彩感、ダンスから現れる身体性、ハイパーリアルでファッショナブル、どこかユーモアを感じられる独自の世界観で、多くの人々を魅了している。

今回は、“NEW DEPARTURE”をテーマに、ムイノが幼い頃から記憶に残っていたというウクライナの寓話『トンボとアリ』をモチーフとしたムービーが制作された。ちなみに『トンボとアリ』は、イソップ寓話の『アリとキリギリス』のウクライナ版。幼い頃のムイノにとって『トンボとアリ』の物語は、働かなければこうなってしまうという戒めでもあり、衝撃を受けたのだという…。本作では「それを自分の好きなテイストで描き直したいと思った」とのこと。

そしてうまれたのは、季節の美しさを謳歌するトンボと、生きるために働き続けるアリが、出会い、新しい世界へと旅立つストーリー。

フープ状の骨組みのある「クリノリン」や、「パニエ」「マーメイドコア」など、18世紀のクラシックなロココスタイルを取り入れたファッションに、トレンドカラーでもあるパープルなど、淡いセンシュアルなトーンの春から始まり、続く夏編ではビビッドなカラーとボディコンシャスなファッション、そして生き生きと自由に楽しむ姿が描かれる。もちろんストイックなアリの姿も。

スタイリストは、今回初めて組んだというリサ(Lisa Jarvis)。仏版Numeroでも活躍する彼女は日本に暮らしていたことがあり「パルコの案件って本当!?」とすぐに反応があったのだとか。撮影では、マヨルカ島で見つけたものをスタイリングに取り入れていたそうで、夏のトンボのヘアアクセサリーの赤い花も、実は、前日に行ったレストランで見つけた赤いナプキン! 「常にファッションのことを考えているので、身の回りのものをスタイリングにいかせるんだと思います。」とムイノ。

撮影は同じくウクライナ出身のシネマトグラファーのニキータ(Nikita Kuzmenko) 。今回のクルーは「ほとんどがウクライナで出会い、ずっと一緒に動いているチーム」だという。「今はウクライナに帰ることができないので、こうやってみんなで(撮影場所の)マヨルカ島に集まって、ひとつのプロジェクトに取り組めるのがとても嬉しかったし、いろんな感情が込み上げてきました。」

ムイノはテーマについてこう語っている。「コロナ禍で、人々はそれぞれの場所に留まらなければならない時期が続きました。わたしは旅行をするのが好きなので、“NEW DEPARTURE”と聞いたときに、このムービーを見た人がいろんな場所へ旅した気分になれる映像をつくりたいと思いました。
旅行をするときは、服装も変わりますよね。どこかに行けなくても、服装を変えるだけで気分は変わります。どこかへ行くことは、服装やスタイルにインスピレーションを与えるし、ファッションは社交的な気持ちを高めてくれるものだと思うんです。」

また今回、オファーを受け、過去のパルコのキャンペーンを調べてみて、そのクリエイティブにも驚いたという。なかでも衝撃を受けたのは「1980年代の吉祥寺PARCOのCF。商品の紹介はなく、ダンサーたちがヘリポートのヘリコプター前でダンスをするという内容でした。ファッションブランドの仕事をするときは、当然ですが特定の服やバッグを見せなければならないという制約があります。その点、パルコのように自由に物語を描ける機会はなかなかないので、とても楽しく作品をつくることができました。」とのこと。

ちなみにムイノが言及したのは、1980年に吉祥寺PARCOのオープン時に放映されたもので、弊誌連載「男の利き手」も手がける写真家の操上和美、そしてアートディレクションは石岡瑛子によるもの。コマーシャルな現場においても、信じられないほどの斬新な発想を引き出し、クリエイティブを牽引してきたパルコには、今の感覚ともつながる伝説級の作品が揃っている。

そして今、タヌ・ムイノから、新しい季節に届けられたムービー。そこには異質な存在との出会い、それぞれの世界があることの受容、変わることを楽しみ、好きを表現できることの喜びに満ちている。ファッションはいつだって、それを叶えてくれる。そしてパルコが培ってきたクリエイティブにも、その精神は宿っている。

最後にパルコからのステイトメントを。

「抑圧された世界から抜け出し、新たな生活・人生に向けて旅立つことで得られる、ファッションやエンタテインメント、様々な価値観を持った人々との出会い、文化的で彩りのあるライフスタイルを楽しむことをパルコは応援しています。」

7月頃には秋冬編が公開される。マヨルカ島の美しい日差しに守られた、パルコとタヌ・ムイノとのクリエイティブ、そしてトンボとアリの旅を一緒に楽しもう。

PARCO 2023SS “NEW DEPARTURE”
URL/https://parco.jp/style/

Text:Hiromi Mikuni

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