京都市立芸術大学ギャラリーで「Positionalities」開催中
京都市立芸術大学ギャラリーは、3人の現代アーティスト、山田周平、金光男、東恩納裕一のグループ展「ポジショナリティーズ(Positionalities)」を8月28日(日)まで開催している。
これまでアーティストが社会・政治的問題に接近を試みるとき、アーティスト自身の立ち位置の差異はあまり問われてこなかった。本展では、複数形の「Positionalities」をタイトルに掲げているとおり、社会・政治的批評性をはらむ現代アート作品のなかに3名のアーティストたちの異なる立ち位置(ポジショナリティ)の前景化し、作家が多様な社会・政治的問題にアプローチするときの立ち位置の重層性を浮かび上がらせている。
「ソーシャリー・エンゲージド・アート」や「アート・アクティビズム」などの言葉にもあるように、アーティストが作品制作を通して様々な社会・政治的問題に切り込むことも徐々に一般的になりつつある。
キュレーターの山本浩貴は「美術史的文脈とも接続させながら、芸術を通して社会と個人の関係性を問い続けてきた山田、金、東恩納の実践はいずれもユニークかつ重要なものと言える。加えて、ときにエモーショナルにときに挑発的に鑑賞者を刺激する彼らの作品は、アナリティカルで客観的視座を備えた作品の多い日本におけるソーシャリー・エンゲージド・アートやアート・アクティビズムの領域で異彩を放つ」と語っている。
金光男
山田周平は現代社会に対する深い問題意識と関心をもちながらも、作品における彼の立ち位置は一貫して皮肉かつ冷笑的。在日コリアン3世の金光男にとって、作品のテーマともつながるアイデンティティの問題は、つねに自らの存在にまとわりつき容易に距離をとって眺められるものではない。東恩納裕一の代表作である、蛍光灯を主要モチーフとする「シャンデリア」シリーズは、日本社会に浸透するメンタリティを批評的に浮かび上がらせるが、作品のなかで彼自身の存在感は極限まで減じられている。3名はいずれも「社会-個人-歴史」の連累のなかで過激で挑発的な芸術実践を行い、言語化しにくい感情や情動、あるいはその徹底した欠如がベースになっている点で共通しながらも、作品における彼ら自身の立ち位置は大きく異なっている。
東恩納裕一 《Large Interior》(展示風景)2021 Size: flexible, LED, aluminum, electric wiring Courtesy: void+/撮影:森雅俊
「ソーシャリー・エンゲージド・アート」や「アート・アクティビズム」をめぐる学際的議論に対しても、新たな角度から一石を投じえる本展に、京都へ訪れる際はぜひ足を運んでみては。
Positionalities 金光男 東恩納裕一 山田周平
会期/2022年7月30日(土)〜2022年8月28日(日)
会場/京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
住所/京都府京都市中京区押油小路町238-1
開館時間/11:00〜19:00
休館日/月曜日
入場料/無料
TEL/075-253-1509
URL/https://gallery.kcua.ac.jp/archives/2022/8719/
Text:Midori Oiwa