日常に戦争がやってくる。マームとジプシー「cocoon-コクーン-」 | Numero TOKYO
Culture / Post

日常に戦争がやってくる。マームとジプシー「cocoon-コクーン-」

コロナ禍で一度延期された作品が上演される。7月から再演されるマームとジプシーの「cocoon」もそうしたもののひとつだが、ある種の痛みをもって、いま、この時期に再演されるべき、と感じる作品だ。

他愛ない少女たちの毎日の中に、恐ろしい戦争がやってくる。今日マチ子の漫画「cocoon」を原作に、賑やかに生きる少女たちの日常が否応なしに死と隣り合わせの日々へと変わっていく様子を描いたこの作品は、2013年に初演。2015年の再演では、演出家の藤田貴大に翌年の読売演劇大賞優秀演出家賞をもたらした。2020年にも全国6都市をめぐるツアーを企画していたものの、コロナ化で中止され、再演は沖縄返還50周年の今年になった。

沖縄返還行事が様々行われる中、この50年に沖縄に起きた様々なことに思いをいたすことはもちろんだが、それに加えてロシアとウクライナとの間に起きている事が作品にリアリティをもたらすことは想像に難くない。家族の話や好きな人の話をしている、他愛ない話に笑い声をあげている少女の毎日に突然、爆弾が落ちてくる残酷さが、沖縄にもかつてあったのだ、ということを、私たちはもう一度確認することになるだろう。

cocoon 2015年

2013年の初演以降、演出の藤田は沖縄を何度も尋ね、地元に根付く人々との交流を経て、那覇文化芸術劇場なはーとのこけら落としプログラムを制作した。そうした日々の中から、沖縄の人々の間に流れるものを今作に改めて付け加えるという。

藤田の作品作りの姿勢は、今回の作品の特設HPでも見ることができる。2020年の公演中止以降、続けられてきた演出家と出演者たちの細かなやり取りや作業の様子が事細かにつづられているのだ。

コロナ禍の中での制約はありながら、食べたり、話したり、歩いたり。そうした「日常」を交えながら、作品を作り出す関係者たちの姿は、まぶしく、愛おしい。この出演者たちの「cocoon」は、重く優しく見る者の心をえぐることになるだろう。

舞台 MUM&GYPSY 15th anniversary year vol.2「cocoon」

原作/今日マチ子「cocoon」(秋田書店)
作・演出/藤田貴大(マームとジプシー)
音楽/原田郁子

出演/青柳いづみ 菊池明明 小泉まき
大田優希 荻原綾 小石川桃子
佐藤桃子 猿渡遥 須藤日奈子
高田静流 中島有紀乃 仲宗根葵
中村夏子 成田亜佑美

石井亮介 内田健司 尾野島慎太朗

<東京公演>
日程/2022年7月9日~17日
会場/東京芸術劇場 プレイハウス
<長野公演>
日程/2022年7月23日~24日
会場/サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)小ホール
<京都公演>
2022年7月30日~31日
会場/京都芸術劇場 春秋座(京都芸術大学内)
<愛知公演>
日程/2022年8月6日~7日
会場/穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール
<福岡公演>
日程/2022年8月14日
会場/北九州芸術劇場 中劇場
<沖縄公演>
日程/2022年8月20日~21日
会場/那覇文化芸術劇場なはーと
小劇場
<埼玉公演>
日程/2022年9月2日~4日
会場/彩の国さいたま芸術劇場大ホール
<北海道・伊達公演>
日程/2022年9月17日
会場/だて歴史の杜カルチャーセンター
<北海道・士別公演>
日程/2022年9月23日
会場/あさひサンライズホール
※公演概要は、各会場HPをご覧ください。

公式URL:http://mum-cocoon.com/

Text: Reiko Nakamura

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