今週末まで!「Chim↑Pom展」@森美術館を瀧波ユカリがレポート
独創的なアイデアと卓越した行動力で、社会に介入し、私たちの意表を突く数々のプロジェクトを手がけてきたアーティスト・コレクティブ、Chim↑Pom from Smappa!Group。結成17周年を迎えるChim↑Pom from Smappa!Groupの初期から近年までの代表作と本展のための新作計約150点を一挙に紹介する初の本格的回顧展は、今週末まで森美術館で開催中。漫画家の瀧波ユカリがレポートする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年5月号掲載)
「わかる」の地平で圧倒的叡智に震える
「ギャルがピンク色のゲロを吐く」「センター街の鼠を捕獲して剥製にする」。Chim↑Pomの作品内容について耳にするたび「意味がわからない」と感じたり、率直にいえば不快感を覚えたこともあった。
「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」は、活動初期から現在までの作品を網羅的に体験できる回顧展だ。それ自体がプロジェクトである託児所の横を通り抜けて中に入ると、廃墟ビルのような空間に映像作品の音声が騒々しく響く。時系列に、しかし秩序を逸脱して並ぶ作品群と対峙しながら、私は「わからない」と感じた過去の自分と出会っていた。
その作風が「社会への介入」という言葉で表されるChim↑Pomがテーマに選んできたのは、触れるほどのものではない、もしくは触れるべきではないとされてきたものたちだ。私自身もそのように見なして忘れ去ってきた。時を経て、そういった存在こそが実は時代の象徴であったと誰もが「わかる」ようになった今、作品群はChim↑Pomの叡智と俊敏さをさらに強く証明している。震災直後の福島での作品はまさに真骨頂だ。
展示室の上層部に設置されたスペース「道」では、Chim↑Pomと鑑賞者によってその機能が育てられていく。森美術館で展示できなかった作品の一部から構成された別会場では、リアルタイムの「介入」を目の当たりにできる。「ハッピースプリング」は回顧展であると同時に最新作であり、現在進行の社会現象だ。
「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」
会期/2022年2月18日(金)~5月29日(日)
会場/森美術館
住所/港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
開館時間/10:00~22:00(最終入館 21:30)
会期中無休
www.mori.art.museum
※最新情報は上記サイトを参照のこと
Text:Yukari Takinami Edit:Sayaka Ito