ルメールがフォークアーティスト、ジョゼフ・ヨアクムの展覧会を開催
ネイティブアメリカンのアーティスト、ジョゼフ・エルマー・ヨアクム(1890-1972)が旅先で描いた静かな風景画からインスピレーションを得て、22年春夏シーズンのコレクションを発表したLEMAIRE(ルメール)。
このワードローブを記念し、またジョゼフ・エルマー・ヨアクムのレガシーを継承するため、2022年3月25日から4月3日まで、東京の特別会場にて14点の作品からなる展覧会「INSCAPE, In the depths of Joseph Elmer Yoakum’s landscapes」を開催する。
ルメールは、ネイティブアメリカンのフォークアーティスト、ジョゼフ・エルマー・ヨアクム(1890-1972)が旅先で描いた静寂な風景画から、シルクとコットンの軽やかなシリーズを制作。山々をモチーフにした作品は、遥か彼方の景色が持つ詩的な力を表現している。
いまにも動き出しそうなリズミカルな曲線で描かれた岩や森、山々。地形の断面とシームレスな川や空。パステルカラーで彩られた、人工的な建造物のないドローイングは、神の創造の瞬間を想起させる。そんな、ジョゼフ・エルマー・ヨアクムの独特な風景観は、どのように築かれたのか。
ヨアクム自身は、チェロキー族の両親を持つネイティブ・アメリカン、そしてアフリカ系とアメリカ系であると主張していた。子どものころはサーカス団に入り、第一次世界大戦中は若い兵士としてフランスに渡り、後に、単身、列車でアメリカ西部を横断したのち、70歳でシカゴに定住。そこで創作活動に打ち込み、晩年の10年間にすべての作品を制作している。アメリカや異国の地を訪れる遊牧民としての彼の人生を、記憶を辿りながら2000枚以上の風景画に描き、ポストカードからインスピレーションを得たような、ロマンティックな世界を構築した。
ジョゼフ・エルマー・ヨアクムは、勤勉な測量士のように地形データを収集し、ごく一般的な紙の上にボールペン、色鉛筆、パステル、水彩絵の具などを使って作品を制作。夢であれ現実であれ、考古学的なドローイングは、訪れた風景の断片を捉えながら、彼の揺らめく旅と同様に、作家の内面の混沌の絶え間ない動きを明らかにする。山は脳のように、柔らかい川は血の流れのように、空は穏やかな海のようにも見え、私たちが住む世界、そして心の風景の奥深くを思い出させてくれる。会場には作品をランダムに、また少し異なる視点からも鑑賞できるよう工夫された回廊が設置され、時間の流れを逸脱し、想像の世界にある迷宮のような場所から私たちを誘う作品世界に浸ることができる。
現在、彼の作品は複数のパブリックコレクションに収蔵されており、特にシカゴ現代美術館、ワシントンDCのナショナル ギャラリー、ピッツバーグのカーネギー美術館、フィラデルフィア美術館、ホイットニー美術館など、数多くの権威ある個展やグループ展で取り上げられている。ニューヨーク近代美術館(MOMA)では、2021年11月28日から2022年3月19日まで作家初の大回顧展、「JOSEPH YOAKUM: WHAT I SAW.」を開催したばかり。
なお、会場となっているジュエルズ オブ アオヤマの1Fにあるショップ、SKWAT/LEMAIREではジョゼフ・エルマー・ヨアクムの作品集が購入可能。春夏コレクションと合わせて、ぜひこの特異な作品の魅力を堪能してほしい。
「INSCAPE, In the depths of Joseph Elmer Yoakum’s landscapes」
会期/2022年3月25日(金)~4月3日(日)
開館時間/11:00~19:00
会場/ザ ジュエルズ オブ アオヤマ 3F
住所/東京都港区南青山5-3-2
Tel/03-6384-0237
入場料/無料
Text:Chiho Inoue