「Mame Kurogouchi」10年間のクリエーションを辿るエキシビション | Numero TOKYO
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「Mame Kurogouchi」10年間のクリエーションを辿るエキシビション

Mame Kurogouchi(マメクロゴウチ)がブランド設立10周年を記念した展覧会「10 Mame Kurogouchi」を長野県立美術館にて2021年8月15日(日)まで開催中。長野はデザイナーの黒河内真衣子の出身地でもある。本展はブランドを象徴する10のキーワードから、黒河内の創造のプロセスやデザインの美学などを紐解く内容となっている。

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そのキーワードとは、「ノート」「曲線」「刺繍」「長野」「色」「クラフト」「私小説」「夢」「テクスチャー」「旅」。コレクションのルックを年代順に並べるということはせず、また会場の順路も自由なので、黒河内の感性や頭の中を彷徨うような感覚で没入できる。 例えば「色」のセクションでは、さまざまなトーンの青から生み出された2019年秋冬コレクション「The Second Diary」のルックと、実際にインスピレーションを受けた品々を展示。江戸時代の古布から初源伊万里の陶片、ペットボトル、ビニール袋、洗濯バサミ……。日常で目にする何気ないものにも美を見出す黒河内の視点は、私たちの周りには美しいものが溢れているということを気づかせてくれる。

そしてこれらのインスピレーションが、どのように黒河内の中に湧き出てきたのかを記録しているのが、今回初公開となるノート。1シーズンに1冊書き留めているという10年分のノートから厳選した360ページを展示している。日常の出来事や夢で見た情景のメモ、押し花、スケッチなど、黒河内の心を動かした物事や日々の生活からコレクションが生まれる様子を垣間見ることができる。「実際のイベントと夢で見たことが混在しているので、読み返したときに自分でもこれは何だろう?と思うことがありました」と黒河内。誰かに見せるために書いてきたものではないというのが嘘のような、詩のように美しい言葉は彼女の内面そのものを映し出しているよう。ファンは必見。

黒河内に改めてこれまでの歩みを振り返ってもらうと、「この10年、ずっと変わらずに服作りを続けてきたんだなと思います。そのことが自分自身の背中を押すきっかけにもなりましたし、これからも『これでいいんだ、これを大切にしよう』と思うきっかけになりました」と語った。

Mame Kurogouchiの類い稀なイマジネーションと美意識の世界にたっぷりと浸れる記念碑的なエキシビション。ぜひ会場で、隅々まで見入って欲しい。

10 Mame Kurogouchi
期間/2021年6月19日(土)〜8月15日(日)
場所/長野県立美術館
住所/長野市箱清水1-4-4(善光寺東隣)

 

Photos & Text: Yukiko Shinto

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