マームとジプシー「てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。 そのなかに、つまっている、いくつもの。 ことなった、世界。および、ひかりについて。」 | Numero TOKYO
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マームとジプシー「てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。 そのなかに、つまっている、いくつもの。 ことなった、世界。および、ひかりについて。」

今年に入って、多くの作品で公演中止や延期の判断をしてきたマームとジプシー/藤田貴大が「公演」を再開した。兵庫県豊岡市、香川県善通寺市での公演を経て、東京公演が今週末から幕を開ける。 今回の作品は演劇作家・藤田貴大が2013年に発表した初期作品「てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。」の再演だ。当初この時期は、イタリア人俳優とのコラボレーション作品「IL MIO TEMPO-わたしの時間-」が予定されていたのだが、今年の上演実現は難しく、本作「てんとてん…」に改めて取り組むことになった。本作は初演から少しずつリニューアルを加えながら、国内外数多くの場所で上演が重ねられてきた作品だ。 田舎町に住む10代の閉塞的な心象風景と、2001年のアメリカ同時多発テロ、2011年東日本大震災、そして現在(いま)を往復しながら、物語は進んでいく。世界で起きた出来事と個人的な記憶。その行ったり来たりの中で、観客それぞれも自分自身に残る「記憶」と対峙することになる。

ライターの橋本倫史が、豊岡・香川公演に同行し書いたドキュメントが「マームとジプシー」のホームページで読むことができる。今年、マームとジプシー/藤田貴大がどのように本作に向き合っているのかがよく分かるので、ぜひそちらも読むことをお勧めする。その中で、半年にわたるコロナ自粛中、藤田は自分の書く言葉が「俳優によって発語されることではじめて成立する」ということを改めて感じたと書かれている。

藤田作品は作り手と受け手が同じ場所に集まることで成立し、上演時間という同じ時間を過ごすことでより熟成されていく。そしてその時間は観客自身が「今」という時間に向き合う機会になるだろう。この時期だからこその送り手のメッセージをかみしめたいと思う。

舞台:
「てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。」

作・演出/藤田貴大

出演/荻原綾 尾野島慎太朗 成田亜佑美 波佐谷聡 召田実子 吉田聡子

<東京公演>
日時/10月2日(金)-10月4日(日)
会場/小金井宮地楽器ホール 大ホール
チケット料金/前売り 4000円
URL/ http://mum-gypsy.com/wp-mum/archives/news/dots_2020

Text:Reiko Nakamura

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