篠原ともえが衣装デザインの個展を開催。余剰生地のサステナブルな取り組みに注目
クリエイターとして幅広く活躍する篠原ともえさんが初のギャラリー個展を開催。布を四角の形状のまま用い、さまざまなシルエットのドレスへと昇華させた。使用された布は、舞台衣装生地の余剰布だと話す。
90年代歌手として活動をスタートした篠原さん。カラフルな個性溢れるファッションで“シノラー”として社会現象を巻き起こした。あのアイコニックな衣装は、篠原さん自身のアイデアや自身で手作りしたもの。多忙を極めた当時も絵を描いたり、物作りを続けていたそう。文化女子大学短期大学(現・文化学園大学)で被服を学び、昨年パターン制作を学び直すため母校に再入学している。
子どもの頃から、洋裁、和裁に親しんでいた祖母や母の影響で手作りをしていたと話す。20代で祖母の手縫いの着物を形見分けでもらい、仕立て直すために自分で着物をほどいた時に、綺麗な縫い目や襟芯の内側に施された柄の生地を目にした。縫った祖母と自分しか見ることのない美しさに心動かされ、祖母からのメッセージを受け取った気がしたそう。
「祖母の着物を通して、私は三世代まで残せるものを作れるのかなと、ずっと考えていました。そういうものをいつか作れたらいいなと思いながらいろいろ活動する中で、2013年に松任谷由美さんのステージ衣装のお声がかかり、2015年の嵐さんのツアー衣装を手がけることになったんです」
舞台衣装の仕事を通して知ったのが、余剰布の存在だった。本番の衣装に辿りつくためのサンプルや予備、演出都合上の変更による廃棄、また仕入れ先で見た大量の余り布。ステージのクオリティを保つためには必要なことだと知る一方で、どうにかならないものかと思い続けていた。
「今回、衣装生地屋さんとのコラボレーションで新たなクリエイションで展覧会をすることになり、祖母の着物の流れから、余剰布をそのまま生かした四角い布で何かを作りたいと思っていて。シャツやワンピースなどを作ったりしたのですが、最終的に衣装に辿り着きました」
手がけたドレスは全て余剰布を四角いまま使用して作られている。ギャザーとタックを寄せて丸みのある立体に仕上げたり、小さな四角をスパンコールのように幾重にも重ねたり、全て篠原さんの手作業で生み出された。
また展示会場は図らずとも一つのステージのように演出されている。
「四角を丸くするというシンボリックなアイコンでのオープニングがあって、ヒット曲を歌うようにビッグシルエット、バラードを歌うようにしっとりしたドレス、元気いっぱいのミニドレス、クライマックスにいちばん時間をかけたドレス、アンコールにまた四角が強調されたドレスがある。まるで一つのステージのように作っていることに後から気づきました」
自分がステージで仕事をしてきたことと、松任谷由実さんと嵐の衣装を手がけるにあたり、ブロックブロックで世界観を変えるという課題を乗り越えたことで向き合えた今回の発表の場。
「ここはギャラリーだけど私のステージなんです。自分の様々な経験が作品に現れていると思います」
一枚の布から紡ぎ出され美しいドレスとドローイングによる篠原さんのステージを是非訪れてほしい。
篠原ともえ「SHIKAKU」−シカクい生地と絵から生まれた服たち
19日(日)19:00~ インスタライブにて篠原ともえによる作品解説・ライブソーイング
@tomoe_shinohara
会期/~7月20日(月)
会場/渋谷ヒカリエ8階 CUBE 1, 2, 3
住所/東京都渋谷区渋谷2丁目21−1
入場料/無料 要事前申し込み
時間/11:00~20:00(日〜18:00)
展示会URL/https://shikaku.peatix.com/
展示全作品と手描きイラストが掲載されたアートブックを500部限定発売中。オンライン販売も可。
問い合わせ先/hello@studeo.co.jp
Text: Michie Mito