渡辺謙が宮沢氷魚の挑戦を受ける。経験と革新の「ピサロ」 | Numero TOKYO
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渡辺謙が宮沢氷魚の挑戦を受ける。経験と革新の「ピサロ」

渋谷PARCOが2019年11月に生まれ変わり、PARCO劇場も2020年1月下旬にこけら落とし、2020年 3月13日より2021年 5月上旬まで、14作品のオープニング・シリーズ公演を上演する。ある程度の年代から上の世代には、PARCO劇場に何かしらの思い入れがある演劇ファンがいる。スペイン坂を厚底で転げ落ちたとか、恋人と手をつなぎながら開演時間に向けて猛ダッシュとか、若い社会人時代、PARCO劇場は生活の延長上にあった、という人も少なくない。

記念すべきオープニング シリーズ第1弾は、渡辺謙主演の「ピサロ」。1985年同劇場で上演された作品だ。この時の主演は、今も渡辺が敬愛してやまない山崎努。前年に映画デビューしたばかりの渡辺は、この作品で山崎努にぶつかり、跳ね返され、「俳優を一生の仕事としてやっていく覚悟が決まった」と語る。

今回、渡辺が演じるのは山崎が演じたピサロ。圧倒的に数的有利なインカ帝国を制圧するスペインの将軍だ。このピサロに屈辱的な帝国征服を許してしまうインカの王アタワルパには宮沢氷魚がキャスティングされている。成り上がりものであるスペインの将軍ピサロに、太陽の子と位置付けられるインカの王が圧倒される。高度な文化を持ったインカ帝国はなぜ、ピサロに屈したのか。熟練と若さのぶつかり合いを通して、私たちはその訳を知ることになる。

山崎の大きさと重さを体感した渡辺は、還暦を迎えてなお余りあるエネルギーを、フレッシュそのものの宮沢に見せつけてくれるだろう。宮沢はどのように渡辺にぶつかり、跳ね返し、吸収して、数十年後の「ピサロ」への一歩を踏み出すのか。劇場も演劇も経験の上に革新を重ねて、その地層は厚くなっていく。

舞台「ピサロ」

作/ピーター・シェーファー
翻訳/伊丹十三
演出/ウィル・タケット
出演/渡辺謙
宮沢氷魚、栗原英雄、和田正人、大鶴佐助
首藤康之、小柳友、田中俊介、菊池均也
浅野雅博、亀田佳明、金井良信、下総源太朗
竹口龍茶、松井ショウキ、薄平広樹、中西良介
広島光、羽鳥翔太、加藤貴彦、萩原亮介、鶴家一仁
王下貴司、前田悟、佐藤マリン、鈴木奈菜、宝川璃緒
外山誠二、長谷川初範

公演日程/2020年3月13日(金)~4月20日(月)
会場/PARCO劇場
料金(全席指定・税込)/13,000円 U25チケット6000円(観劇時25歳以下対象・要身分証)
チケット詳細は公式ホームページまで

お問合せ/パルコステージ 03-3477-5858(月~土 11:00~19:00/日・祝11:00~15:00)

Text: Reiko Nakamura

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