Art / Post

希望と元気をくれるシニカルな絵
ジョン・ルーリー展 @ ワタリウム美術館

「この人、なんでもやっちゃいます」2015
「この人、なんでもやっちゃいます」2015

サックス奏者や俳優として活躍し、90年代後半から画家として作品を発表しているジョン・ルーリー(John Lurie)の個展が、東京・ワタリウム美術館にて2019年7月7日(日)まで開催中。劇作家・演出家・映画監督・音楽家とマルチな肩書きをもち、現在は台本・演出を務める舞台『キネマと恋人』が公演中のケラリーノ・サンドロヴィッチがレポート。(「ヌメロ・トウキョウ」2019年7・8月合併号掲載)

撮影:今井紀彰
撮影:今井紀彰

ジョン・ルーリー、変遷の過程

ライム病という奇病について私は詳しく知らないが、重症になると酷いらしい。ジョン・ルーリーを病魔が襲ったのは90年代の後半だという。俳優として主演した映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984)の彼はもちろん最高だったけれど、私は初期のラウンジ・リザーズ(彼が率いた“フェイク・ジャズ・バンド”)の大ファンだった。その彼がどうやらもうサックスを吹けないようだと伝え聞いた時のショックは忘れない。しかしその頃、いや、どうやらそのずっと前から、彼は絵筆を手にしていたのだ。

「山火事のおかげでプカプカ人発見」2018
「山火事のおかげでプカプカ人発見」2018

2010年にワタリウム美術館で開催された待望の個展を見に行った。なんだかよくわからない動物や奇妙にデフォルメされた人間は魅力的だったものの、その裏に蠢く「暗さ」や「警告」に正面から向き合う気持ちになれなかったというのが正直な感想。ところがこの度、あれから9年の間に絵日記のように描き連ねられた近作を眺めに行ったら、一見して明るい色に彩られた作品が多くて驚いた。とても楽しかったのだ。タイトルもいい。「この人、なんでもやっちゃいます」「山火事のおかげでプカプカ人発見」「人は自然を破壊などできない、自然はあまりにてごわい。」。

「人は自然を破壊などできない、自然はあまりにてごわい。」2010
「人は自然を破壊などできない、自然はあまりにてごわい。」2010

そこには自由奔放な気持ちよさがあった。癌を患ってさらなる闘病中だとのことだが、病状に対する本人のポジティブなコメント同様、世に蔓延る不条理に抗うシニカルさは、我々に希望と元気をくれる。

撮影:今井紀彰
撮影:今井紀彰

ジョン・ルーリー展
Walk this way

会期/2019年4月5日(金)~7月7日(日)
会場/ワタリウム美術館
住所/東京都渋谷区神宮前3-7-6
開館時間/11:00〜19:00(水は21:00まで)
休館日/月
URL/www.watarium.co.jp/exhibition/1904john/

Text:Keralino Sandorovich Edit: Sayaka Ito

Profile

ケラリーノ・サンドロヴィッチKeralino Sandorovich 1963年生まれ。劇作家、演出家、映画監督、音楽家。ナイロン100℃主宰。劇団公演に加え、ユニット、プロデュース公演を多数手がけ、2018年秋には紫綬褒章を受章。新作ソロアルバム『LANDSCAPE』発売中。

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