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糸を紡ぐアーティスト、塩田千春個展「魂がふるえる」@森美術館

毛細血管のように張り巡らされた糸と糸の間(あわい)に佇み、そこに息づく“何者か”の息吹にじっと耳を傾ける――。ベルリンを拠点に活動してきたアーティスト塩田千春。その軌跡から、私たちを取り巻く遙かな深淵が浮かび上がる。(「ヌメロ・トウキョウ」2019年7・8合併号掲載)

『不確かな旅』2016年(展示風景:「不確かな旅」ブレイン|サザン(ベルリン)2016年) 撮影:Christian Glaeser
『不確かな旅』2016年(展示風景:「不確かな旅」ブレイン|サザン(ベルリン)2016年) 撮影:Christian Glaeser

塩田千春――その名前はいつも、言葉を超えた感覚とともに語られてきた。室内を埋め尽くす赤い糸と、フレームだけの小舟(『不確かな旅』)。

『静けさの中で』2008年(展示風景:「存在様態」パスクアートセンター(ビール/ビエンヌ、スイス)2008年) 撮影:Sunhi Mang
『静けさの中で』2008年(展示風景:「存在様態」パスクアートセンター(ビール/ビエンヌ、スイス)2008年) 撮影:Sunhi Mang

『時空の反射』2018年 所蔵:Alcantara S.p.A.(展示風景:「時間を巡る9つの旅」パラッツォ・レアーレ(ミラノ)2018年) 撮影:Sunhi Mang
『時空の反射』2018年 所蔵:Alcantara S.p.A.(展示風景:「時間を巡る9つの旅」パラッツォ・レアーレ(ミラノ)2018年) 撮影:Sunhi Mang

黒い糸が張り巡らされた空間に佇む、焼け焦げたグランドピアノと観客たちの椅子(『静けさの中で』)や、鏡の前に吊るされた白いドレス(『時空の反射』)。

『内と外』2009年(展示風景:ホフマン・コレクション(ベルリン)2009年) 撮影:Sunhi Mang
『内と外』2009年(展示風景:ホフマン・コレクション(ベルリン)2009年) 撮影:Sunhi Mang

取り壊された建物の窓枠で作られた回廊(『内と外』)。そして今、GINZA SIXの吹き抜けに無数の白い糸を巡らせて浮かぶ『6つの船』…。どの作品にも、場や人々のつながり、記憶や不安など、“不在のなかの存在”と呼ぶべき気配が息づいている。

『掌の鍵』2015年(展示風景:第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(イタリア)2015年) 撮影:Sunhi Mang
『掌の鍵』2015年(展示風景:第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(イタリア)2015年) 撮影:Sunhi Mang

本展は、塩田が拠点を置くベルリンほか世界各地で発表してきた大規模なインスタレーションをはじめ、立体やドローイング、映像など、20年の軌跡をたどる過去最大規模の個展。

塩田千春近影 撮影:Sunhi Mang
塩田千春近影 撮影:Sunhi Mang

「どうにもならない心の葛藤や言葉では伝えることができない感情、説明のつかない私の存在、そのような心が形になったのが私の作品です」(展覧会メッセージより)。初期の身体パフォーマンスに始まり、再発したがんの治療の中で直面した「魂はどこにあるのか」を問う新作まで。見えないけれど確かにある。言葉にできないその揺動(ゆらぎ)が、あなたをそっと手招きする。

「塩田千春展:魂がふるえる」

会期/2019年6月20日(木)〜10月27日(日)
会場/森美術館
住所/東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
TEL/03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL/www.mori.art.museum

Edit & Text : Keita Fukasawa

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