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Culture Art

原美術館にて注目の作家リー・キット展が開催中

ⓒLee Kit, courtesy the artist and ShugoArts 撮影:武藤滋生
ⓒLee Kit, courtesy the artist and ShugoArts 撮影:武藤滋生

2018年12月24日(月・祝)まで東京・原美術館にて、リー・キット「僕らはもっと繊細だった。」が開催中。台北を拠点に活動する注目の作家リー・キットによる、日本の美術館での初個展だ。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年12月号掲載)

空間の感情と寄り添う、光の領分

香港出身のリー・キットが、かつての邸宅を改築した原美術館の建物と呼吸を合わせることから始めたという展示作業は、朝夕に窓からさしこむ自然光を見つめながら、そこにゆっくりと流れる時間と漂う感性に触れることでサイトスペシフィックで詩的なインスタレーションを立ち上げることに成功した。

リーのファンたちが愛してやまない彼のシグネチャーともいえる淡い水色。主張するわけでも黙するわけでもないその水色は、はじめからその場所にあったかのように空間に溶け込み、ともすれば見過ごされてしまうかもしれない。

ポツンと置かれた扇風機からそよぐ風の音、“Full of joy”と書かれた空っぽのマグカップ、窓の外で揺らぐ陽の光。何かを強く語りかけるというよりも、我々が思いを巡らすためのきっかけを与えてくれるサインのようなものとしてそこに在るだけだ。

その一方で、リーの作品からは彼が生まれ育った香港の複雑な歴史背景と揺れ動く社会への憂いや抗い、そして自身との対峙や葛藤を垣間見ることもできる。密やかに作品に内包されたその意識は、彼のポリティカルなスタンスを明らかにするのと同時に、声高に伝えることが必ずしも強さや正義ではないことをあらためて教えてくれる。ささやかさや繊細さのなかにある複雑さが秘める声なき声に耳を傾けること。それは「口で饒舌に語れるのなら、それはもうアートではないのかもしれない。」というリーの作家性にも通じている。

空間の感情に寄り添うたゆたう光に触れながら、その繊細さと内なる強さに憧れる。

リー・キット「僕らはもっと繊細だった。」

会期/2018年9月16日(日)〜12月24日(月・祝)
会場/原美術館
住所/東京都品川区北品川4-7-25
開館時間/11:00〜17:00
※水は20:00まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日/月曜日(12月24日は開館)
URL/https://www.haramuseum.or.jp/
問い合わせ/03-3445-0651(代表)

ⓒLee Kit, courtesy the artist and ShugoArts 撮影:武藤滋生

Profile

兼平彦太郎(Hikotaro Kanehira)キュレーター。展覧会の企画と並行してアーティスト・ブックの企画・出版も行なう。近年仕事をした主なアーティストは、ジェイ・チュン&キュウ・タケキ・マエダ、小林エリカ、増本泰斗、ミヤギフトシ、南川史門など。Yamamoto Keiko Rochaix(イギリス・ロンドン)にて「青木陵子+伊藤存」展を手がけたばかり。

Text:Hikotaro Kanehira Edit:Sayaka Ito

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