世界的フォトグラファーSatoshi Saikusaの写真展パリにて幕開け | Numero TOKYO
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世界的フォトグラファーSatoshi Saikusaの写真展パリにて幕開け

日本人で世界を舞台に挑んだファッション・フォトグラファーであり、アーティストであるサイクサ・サトシ(Satoshi Saikusa) の個展がパリで開催。同じ通りに隣接する二つのギャラリーで繰り広げられる、生と死の世界へ足を踏み入れた。

KateMoss_80x100.50
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@Satoshi Saïkusa
RossydePalma
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@Satoshi Saïkusa 「必ずしも真実を伝えない」という写真の限界にチャレンジする“Saikusaワールド”。今一度立ち止まって、モードとは何か、写真とは何かを考えさせられる。 ギャラリー「2ArtAngels」で開催されている「White Devils」。一面、真っ白の壁には、80年代から氏が撮り続けているモード写真や、雑誌社ではボツになった作品が。ケイト・モスのポートレイトにも蝶が貼られ、うたかたの夢のごとくに作品に色を添える。クリスティン・マクメナミー、ステラ・テナントといった往年のスーパー・モデルの写真もあり、いかに彼が第一線で活躍していたのかがうかがえる。 一方、隣の「Galerie Da-End」の黒く塗られた空間では、「NO-ZARASHI」というタイトルのもと作品が並ぶ。『メメント・モリ(死を忘れるな)』というラテン語の金言をテーマに、静物画のように撮られたバラと骸骨の写真には蝶がピンで留められ、ゆがんだ形の十字架の中にはめ込まれたグラフィカルなフォトにまた蝶が舞う。「我々は生と死の間に毎日を過ごしていて、作品を通して、今、生きているということを表現したかった」と語る。

Kalashnikov
Kalashnikov

<Kalashnikov>@Satoshi Saïkusa
「写真の粒子」のように丸く切り取られた花の写真は、テロの被害者に贈られた花々。多くの死をもたらしたカラシニコフが重く語りかける。

Cross_flower_whitebg
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<Genso>@Satoshi Saïkusa
十字架は意図していびつな形に。「宗教というものが強く意識される時代」を物語る。

サイクサ氏といえば、 1984年に渡仏以来、『Vogue』『W Magazine』、仏版『Numero』などのインターナショナル・マガジンで活躍。さらにイヴ・サンローランやランコムなどの広告ヴィジュアルも手がけ、グッゲンハイム美術館やメトロポリタン、V&Aミュージアムに展示されるという快挙も。神戸ファッションミュージアムには常設コレクションとしてその作品が展示されているほど。まさにモード界で国際的に活躍する日本人の草分け的存在だ。

「ルイーズ・ブルジョワ宅でポートレイトを撮影したとき、一枚の写真では彼女を表現しきれない、という思いがあって。そうやって模索するうちにコラージュ作品をつくるようになった」という氏は10年前からアート作品を制作。2015年以降に続くフランステロの被害者に手向けられた花々を切り取った作品など、一点ものの作品が一堂に会す今回の展示。パリに立ち寄った際はぜひ見てほしい。

blue_vanitas
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<No-Zarashi>@Satoshi Saïkusa
一枚の写真のように見えるが、右上の蝶はピンセットで留められている。骸骨の横には最期の生を謳歌するようなバラの花々が。

NO-ZARASHI
会期/2017年9月22日(金)〜11月11日(土)
会場/Galerie Da-End
住所/17,rue Guénégaud Paris 75006
URL/www.da-end.com/satoshi-saikusa-nozarashi/

White Devils
会期/2017年9月22日(金)〜11月11日(土)
会場/2ArtAngels
住所/19,rue Guénégard Paris 75006
URL/www.2artangels.com/project/satoshi-saikusa/

Text:Hiroyuki Morita

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