Fashion / Post
ロマンティックなドレスを提案
ファッションイラストから、デザインの世界へ
──「Match Made in HEL」で披露されるショーピースはどのように選ばれたのですか?
「各ブランド10ルックの発表ですので、ブランドのシグニチャールックと呼べるものを過去のアーカイブより選び、フォークロマンティックな世界観を築きました。幼い頃の記憶を思い起こし、祖母の家のサマーガーデンにあった花々がインスピレーションとなった鮮やかなレモンイエローやプラムピンクのドレスがポイントです」
──そもそも、ファッションデザイナーを志したきっかけを教えてください。
「すべてはイラストからです。幼い頃から、絵を描くことが大好きでした。いつも母や叔母、女の子を描いていました。男の子が憧れる車とかには興味がなかったんです(笑)。成長するにつれて、だんだんと女性のお洋服をイメージして楽しむようになりました。ラインはめちゃくちゃでスタイル画といえるようなものではないですが。いまから思えば、ファッションデザインへ興味を持ち始めたのはそこからです。学生時代のノートを見返すと、ファッションのイラストであふれています。そこから自然な流れで、自分の描いたお洋服を製作したいと思うようになりました。14、15歳くらいの時です」
──インスピレーションをどのようにデザインに落としこまれるのですか?
「はい。私の家族は両親も兄弟も医者でしたので、ファッションとは縁遠いものでした。進路を決める際、ファッションについては趣味にするべきか、このまま仕事にできるのかとても悩みました。でも友人に後押しされて、ひとまず受けてみることに。両親は私が受かるとは思っていなかったようですが、幼い頃から、5分でも空き時間があれば絵を描いていた私の姿を見ていたので、結果にも納得してくれました」
──いまでも、よくイラストは描かれているんですか?。
「もちろん!コレクションを形成する際、最初にミューズになるような女性のキャラクターを想像し、イラストを描きます。その女性を中心としたストーリーをもとにデザインしていくんです。スタジオに、壁一面にミューズのイラストや写真資料を貼ってムードボードを作り、チームとも共有しています。また最近では、iPhoneケースやスカーフなど商品にも私のイラストが度々登場していますよ」
──毎回コレクションごとにミューズを設けているんですね。
「シーズンごとに特定の女性像を設けていますが、いつも根底にあるのは、木登りや泥遊びなど男の子と活発に遊ぶおてんばな女の子。トムボーイのような少女が成長し、フェミニンな装いを楽しむという過程を思い描いています。私にとって、心の中にいつまでも子どもらしい無邪気な気持ちを持ち続けている女性が永遠のミューズ。だから完璧な女性らしさではなく、いつもどこか捻りを加えたスタイルを提案しています。フェミニンなドレスにはラフなヘアスタイルにシューズ、ロマンティックなアイテムには、ダークさやマスキュリンさを加えて。相反する要素のバランスが大切。多面性とともに独特なコントラストを生み出したいと考えています」
──最新の2016秋冬コレクションのテーマについて教えて下さい。
「実在した歴史上の人物、オリガ・ニコラエヴナというロシア人皇女から着想を得ました。二月革命により、終生を郊外で過ごしたといわれている女性です。彼女の物語を自分なりにイメージするとともに私のパーソナルな思い出をリンクさせてコレクションを構築しました。」
──ご自身の経験をデザインに反映されているんですか?
「記憶を辿りデザインのヒントにすることはよくあります。また家族からの影響も大きいです。母の高校生時代の写真をきっかけに、50年代のスクールガールをテーマに掲げたシーズンもありました。母に当時のことを尋ね、14歳で家を出て寮生活を始めた少女の寂しい気持ちとワクワク感を表現したんです。只今制作中の2017春夏コレクションも家族からインスピレーションを得ています」
──制作中の2017年春夏コレクションについて教えてください。
「テーマは、祖母の結婚式について。祖母は15歳で、17歳の祖父と結婚したんです。いまではあまり考えられないですが、戦時中の影響もあったのだと思います。夫婦として歩みはじめた二人ですが、結婚当初は凧上げやカードゲームをして楽しんだりしていたと聞きました。とても愛らしいですよね。そんな大人としての階段を歩みながらも、実際はまだ子どもである少女の物語をもとにコレクションを作り上げています」
──どのコレクションもとてもストーリー性に富んでいますね。
「ノスタルジアを含んでいることが、ストーリーの共通点かもしれないです。でもドレスは身につけてみないとわからないので、フィッティングのあとにレイヤードを加えたり、そぎ落としたり、変化を加えてさせて予期せぬシルエットを生み出しています。ショーの前日までコレクションの全体像は見えてこないことも多々あります(苦笑)」
──ショーといえば、ファッション業界で支持の厚いスタイリストのリース・クラークがスタイリングを担当されていますね。
「彼女とはもう8年くらいの仲になります。まだ雑誌Lulaの編集長として活躍していたときに出会いました。彼女は、ピュアで無邪気な子どもらしい一面を持ち合わせている女性です。私が求める感覚をもった彼女がスタイリングを手がけることで、コレクションに新たな調和を生み出してくれています」
──どんな風にご自身のコレクションを身につけてもらいたいですか?
「自分らしく着てもらうことが一番! 私はコレクションという発表の場で、一つの世界観を提案する訳ですが、ピースを選んでもらえればそこからはもう自由です。お客様それぞれのスタイルに落としこまれているのを、見るととても嬉しくなります。ヴィンテージやハイブランドなど自由にミックスしてスタリングを楽しんでもらいたいです」
Bora Aksu
HP/www.boraaksu.com
ロマンティックなドレスを提案
ロンドン拠点のブランド「ボラアクス」
北欧フィンランドにて開催された壮大なファッションイベント「Match Made in HEL」。ヘルシンキ・ヴィンター空港の滑走路をキャットウォークとし、ファッションショーを行ったことで話題を集めた。このショーに参加したのは、欧州とアジアから選抜された7ブランド。小誌は、ロマンティックなドレスを提案するロンドン拠点のボラアクス(Bora Aksu)に注目。デザインのプロセス、思い描くミューズたちについて迫ります。只今制作中の2017年SSシーズンについても語ってくれました。
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Interview & Text : Yukino Takakura
Profile
ボラ アクス(Bora Aksu)トルコ出身。2002年にセントラル・セントマーチンズを卒業。ロンドンを拠点にレディースファッションブランド、ボラ アクスを展開。デビュー当時から注目を浴び、03年からロンドンコレクションに参加している。レースを用いたロマンティックかつモダンなドレスにはファンも多く、キーラ・ナイトレイなどセレブリティからの支持も厚い。