ジュエリーを超えた “奇跡のアート” に酔いしれて。『アート オブ ブルガリ』展 | Numero TOKYO - Part 2
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ジュエリーを超えた “奇跡のアート” に酔いしれて。『アート オブ ブルガリ』展

19世紀末、創業者一族の手によって生み出された、銀細工のコレクション。 1920年代、アールデコ様式を取り入れた、幾何学的にして品格あふれるデザイン。 20世紀を代表する世界的女優たちが身に着けた、伝説と呼ぶべきジュエリーの数々。 さらに、日本の美意識にインスピレーションを受けた、超絶技巧な職人技まで……。 それは、ジュエリーそれ自体が湛える “人智を超えた神秘” へのアプローチでもある。 なぜなら鉱物とは、数十億年におよぶ地球の地殻変動が作り出した “自然(nature)” の極致だから。 その輝きがはるかな年月を経て、この地上の世界へと姿を現したという奇跡。そこに魅せられて、智恵と技術の粋を注ぎながら、さらなる美を追い求める。目指すのは、人の手によって作り出される極限の美。ここに、自然の対義語となる “芸術(art)” という人為が浮かび上がる。 つまりそれは、“自然 × 人為” によって誰も見たことのない極致––はるかなる神秘へと挑む、人間の深遠なる挑戦なのだ。
『セルペンティ』ブレスレットウォッチ(1970年頃)ゴールド、エナメル、ダイヤモンド  英知や若さ、永遠のシンボルである蛇(セルペンティ)を象(かたど)った、ブルガリのアイコンコレクション。
『セルペンティ』ブレスレットウォッチ(1970年頃)ゴールド、エナメル、ダイヤモンド  英知や若さ、永遠のシンボルである蛇(セルペンティ)を象(かたど)った、ブルガリのアイコンコレクション。
事実、かのアンディ・ウォーホルはブルガリのジュエリーが放つ底知れぬ魅力を指して、「僕にとって、ブルガリの店に行くのは最高のコンテンポラリーアート展に行くようなもの」と賞賛したという。 ひょっとしたら彼は、そのまばゆい輝きの奥に “自然 × 人為” によって生み出される、人智を超えた光を見出していたのかもしれない。

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太(Keita Fukasawa) フリー編集者/ライター/『Numéro TOKYO』コントリビューティング・エディター。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numéro TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集・執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集や、編集者9人のインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)など。

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