名和晃平といえば、ガラスビーズでびっしりと覆われた鹿の剥製を思い出す方も多いかもしれない。生物としての生々しさをも覆い隠すガラスビーズ。目に映っているのは鹿の姿なのか。あるいは別の違った物体なのか。研ぎ澄まされた表層のテクスチャと希薄化されたオブジェの実体、どこからがリアルでどこからがバーチャルなのか。人の感性と物体とをつなぐ境界である “表層” に注目し、我々が生きる現代社会の “リアリティ” について問い続ける名和は、いま世界で最も注目される日本人アーティストと言って間違いない。
本展では、展覧会タイトルにも起用されているインスタレーション作品『Force』をはじめ3つの新作が発表される。黒いシリコンオイルの雨が床に黒い池を構成する『Force』では、鑑賞者の視点が時間・空間・物質のはざまに置かれる。黒い液体の止まることなく流れる様子は、流れていくように見える時間が、実は一瞬一瞬の連続であることを直感させ、我々をとりまく時間のリアリティについて考えさせる。
作品について考えを巡らせるのもよし、ただただ圧倒されるもよし。名和の提示する新しい価値観、世界観、そして強さ= “FORCE” に、感化されてみてはいかが。4月18日まで。
名和晃平 FORCE
会期/2015年3月7日(土)〜4月18日(土)(休廊:日・月)
会場/SCAI THE BATHHOUSE 東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡
時間/12:00〜18:00
TEL/03-3821-1144
URL/www.scaithebathhouse.com
Text: Kahlua Tsunoda