エスパス ルイ・ヴィトン東京が無限∞空間に!? 森万里子 来日インタビュー
© Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo
──その作業を行ううえで、テクノロジーを積極的に取り込んでいるのはなぜでしょうか。
「新しい技術によって、今までにできなかったような表現が可能になってきたからです。
今回の作品も、そのほとんどが3Dソフトで制作したものを3Dプリンターで出力し、確認しながら作り上げたもの。人間が忘れてしまったものを汲み上げ、その意識を取り戻していくにあたり、便利なテクノロジーはどんどん活かしていけばいいと考えています。
ただ、メビウスの帯のように数式に基づいてパラメーターで形状を操作する場合でも、最終的にどの形にするかは自分の美意識を信じて選択していくことには変わりありません」
──90年代には、写真や映像など、ご自身が象徴的な存在を演じる作品で注目を集めましたが、近年は自意識を感じさせない抽象的な立体作品を多く発表されています。その変化の背景には、どのような理由があるのでしょうか。
「それには、表現方法だけでなく、作品の制作プロセス自体が変化してきたことが関係していると思います。
かつては自分自身の身体を使って作品を作っていましたが、私にとっては身体もまた、表現をするうえでの一つの道具に過ぎませんでした。2000年代に入ってからは『ドリーム・テンプル』や『WAVE UFO』といった建築的な作品を発表しましたが、その頃から、自分が意図しているのはそれを観る人の意識に訴えかけることであって、そのために必ずしも肉体的な表現は必要ないと考え始めました。
そしていまは、新石器時代のリサーチで得た視点を、現代のテクノロジーによって表現し、共有していきたいと考えるようになったのです」
© Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo
──宇宙のエネルギーを表現したいという目的から考えると、もし技術が発展してエネルギー自体を展示できるようになったとしたら、作品そのものの実体もなくなるかもしれませんね。
「面白い発想ですね。みんなの意識がつながって、形にしなくてもヴィジョンだけを伝えることができたら、それは素晴らしいことだと思いますし、そういう力を人間はもともと備えていたはずだと思います。でも、いまはまだ形にしなければ意識として共有できないから、形あるものを作るということです。
その意味では、アートこそが言葉の壁を乗り越え、しかも深層意識までつながることのできる、いちばんのコミュニケーションシステムだと思っています」