Interview / Post
俳優、山田孝之が映画
「一生役者を続けて行くぞ、という強い意志がある訳ではないんです。今も楽しいからやらせていただいてますが、“舞台上で死ぬ”と言い切るのもおこがましいですから…」。そう話すのは、俳優として映画、舞台、ドラマなどで活躍する山田孝之。映画『俺はまだ本気出してないだけ』にて、堤真一演じる主人公・シズオのアルバイト先の友人で、社会になかなかとけ込めず将来に悩む青年を好演している。インタビューに答える姿は紳士的で、謙虚。飾らない等身大の言葉ひとつひとつに親しみやすさを覚えてしまうが、フィルムの中の彼は観るものに衝撃を与え、役者の中でも特に異彩を放つ存在。今回演じた青年、市野沢秀一の役づくりについて聞くと、芝居に対する熱い想いを語ってくれた。
──出演作はすべて、脚本を読んでからオファーを受けるか受けなか、ご自身で決めているというのは本当ですか?
「そうですね。基本は脚本を読んで、そのキャラクターを面白いと思うか。やってみたいかと思うか。決め手はいつも毎回いろいろあって、それが多ければ多い程いいという感じです。特に漫画原作があるものは、原作のファンが興味を持ってくれないことが一番もったいない。でもそれと同じだけ、息をしている役者がやる意味というか、個性が出なければその人が演じる意味もなくなってしまう。映像化ではなく映画化なので、原作キャラと変わるのは当たり前。だから、僕がやる意味をどうしても見いだせない時は、受けられないんです。『GANTZ』みたいに、もともと原作が大好きでちょっとでもいいから出る作品もあれば、大好きな漫画の大好きなキャラクターだからこそ、話を頂いた時に映画化すら反対だと思ってしまうこともある。作品自体には賛成で良い作品になるんだろうなと思っても、僕以外の誰かがやった方がいいと感じたら、素直に断ります」
──『俺はまだ本気出してないだけ』出演の決め手は?
「福田さん(福田雄一監督)の作品の中で“ボケじゃない僕”っていうのを、やってみたいと思ったからです。『大洗にも星はふるなり』、『勇者ヨシヒコと魔王の城』など福田さんとは過去にも一緒に仕事をしていますが、今回の映画の市野沢みたいな役ははじめてで。しかもその“福田組”で、堤さんと一緒に仕事ができるというのも嬉しかった。堤さんとは過去に二度共演していますが、実はほとんど絡みがなかった。堤さんって、かっこいい二枚目の役と、コメディタッチでユニークな役と、両極なキャラクターを演じられることが多いかと思いますが、僕が過去に共演したものも今回の作品も、たまたますべてコメディ。だからコメディの芝居をする堤さんを想像はできましたが、それをもっと間近見てみたかった。堤さんと共演したかったという理由も大きいです」
──実際に共演された堤真一さんの印象は?
「面白かったです。シズオというキャラクターに関して“これは僕がやる役じゃない”と、ネガティブな発言をしていましたよ(笑)。撮影前半ならまだしも、後半までずっと、わざと文句のようにぶつぶつと言っていました。原作のキャラクターは太ったおじさんで、堤さんは体型からしてそれとはかけ離れてるじゃないですか。あまりにキャラクターのイメージと自分が違うと、役者なら誰しも“何で自分が?”と思いますから。しかも、その違和感のせいで原作のファンに興味を持ってもらえなかったらと思うと恐い。それでもなんだかんだ、めちゃくちゃ楽しそうに演じている堤さんは印象的でした」
俳優、山田孝之が映画
『俺はまだ本気出してないだけ』出演を決めた理由
俳優、山田孝之にインタビュー。出演作『俺はまだ本気出してないだけ』の完成直後、作品への想いと演技について聞いた。
©青野春秋・小学館/2013「俺はまだ本気出してないだけ」製作委員会
将来について悩む市野沢に、同世代として共感できる?
Photo:Maki Saito(Portrait)
Interview & Text:Yukiko Shinmura
Profile
山田孝之(Takayuki Yamada)俳優。1983年鹿児島県出身。「ちゅらさん」「ウォーターボーイズ」「世界の中心で、愛をさけぶ」「白夜行」「勇者ヨシヒコと魔王の城」など多くにTVドラマに出演。2005年の映画「電車男」で主演を務める。その後も、「手紙」「クローズZERO」「鴨川ホルモー」「十三人の刺客」「闇金ウシジマくん」「その夜の侍」「ミロクローゼ」ほか数々の作品に出演。福田雄一監督作品「俺はまだ本気出してないだけ」では、社会になかなか溶け込めない青年、市野沢役を好演。今後は「凶悪」、2014年には「土竜の唄」「MONSTER(仮題)」が公開予定。