ジュエリー界の奇才、Delfina Delettrez(デルフィナ・デレトレ)にインタビュー | Numero TOKYO
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ジュエリー界の奇才、Delfina Delettrez(デルフィナ・デレトレ)にインタビュー

ボディパーツや昆虫などをモチーフにした、シュールで独特な世界観を表現するジュエリーデザイナー、デルフィナ・デレトレ(Delfina Delettrez)。フェンディ家の4代目ご令嬢で、母親は「バゲッタ」や「スパイバッグ」などブランドを代表するアイコンバッグを世に送り出してきたシルヴィア・ヴェントゥリーニ・フェンディ だ。そんな華麗なるバックグラウンドに甘んじることなくデルフィナは、努力してファッションを学び、やがてジュエリーブランドを立ち上げた。身に着ける人の個性をより際立たせるジュエリーは、多くのファッショニスタを魅了し、注目を集めている。 3月16日、DOVER STREET MARKET GINZA1周年を記念したイベントとして、1階のゴールデンルームでスペシャルなインスタレーションが行なわれた。初来日を果たした彼女は小柄でチャーミングな笑顔が印象的。このキュートな女性のどこからパワフルでオーラ漂うデザインの数々が生まれるのだろう。そのインスピレーションの源に迫る。  
Delfina Delettrez
Delfina Delettrez
──まずは今回のインスタレーションについてお聞かせください。 このインスタレーションで使っているマネキンは70年代のヴィンテージものなの。顔の半分や髪、または手の一部をメタルにして、ミュータントのようなイメージを創り上げたわ。フーチャリスティックで無機質な印象になるように。その反面、どこか人間味を感じさせたいと思ったの。例えば、仲良く囁き合っているペアのマネキンがあったり、一方でつまらなそうな表情を浮かべるマネキン、それから考え事をしているマネキンもある。まるで漫画の吹き出しのように、今にもマネキン自身が話し出しそうなパーソナリティを与えることで、それぞれがここ(インスタレーション)にいる意味が生まれたと思う。そして、個性豊かなマネキンたちに合うジュエリーをそれぞれコーディネイトしたの。   ──制作期間はどのくらい? そんなに長くはないわ。アイデアが浮かんでから形にするまであまり時間はかからなかった。ただ思い描いていたヴィンテージのマネキンを探し出すのが大変だったわ。肌の色やフォルム、顔立ちなど、ヴィンテージマネキンならではの要素が今回のインスタレーションに必要だったの。色々探した結果、最終的にはインターネットで見つけたわ。私たちの時代にインターネットがあって本当に良かった(笑)。   ──普段、クリエイションのインスピレーションはどこから得ているのでしょう? あらゆるものからよ。共通しているのは、それらがとてもパーソナルであるということ。その時々、私の心を捉えて止まない、または本当に必要としているものが反映されているの。デザインするときは少しエゴイスティックな気持ちでいるかもしれない。なぜなら、常に私自身が欲しいもの、どこに行っても探せないようなものをデザインしているから。今は髪の毛の持つ魅力に取り付かれているわ。最近はいつもバッグにハサミを入れていて、気になったときに自分の髪や娘の髪を少しだけ切って観察するの。髪の毛の自然な色み、ツヤ、テクスチャーなどをね。そして、こうしたデザインのアイデアを職人ときちんと共有することが重要なの。技術的な面からみて具現化するのが難しいものももちろんあるから、そんなときは現実的なアドバイスをしてくれる。彼らとのコミュニケーションなしでは、私のジュエリーはこの世に存在しないわ。   ──髪の毛もそうですが、目や唇などボディパーツをデザインに取り入れることが多いですよね。 ええ、人間の身体はとても興味深いわ。妊娠中はよく妖精をデザインに取り入れていたわ。とても不思議なのだけれど、私の中の甘くてロマンティックな部分が引き出されたのかも知れないわね。それに自然をモチーフすることも多いわね。昆虫に関しては、それに対する私の恐怖心を表現しているの。   ──あらゆるものに対して好奇心や探求心を抱くようになったのは何歳の頃? 本当に幼いときからよ。母が家じゅうにあるハサミを私から隠さなくてはならなかったことを今でも覚えている。なぜなら私が周りにあるものを何でも切ったり壊したりしてしまうから。あるとき、母のオートクチュールのピースにハサミを入れてしまったこともあるわ。でもそれは、より素敵になるようにと思ってやったことなの!はじめ母はとても怒っていたけれど、よくよく見たら「このほうが前のものより良いわ!」なんて気に入ってくれたのよ(笑)。幼い頃は母のオフィスで過ごすことが多かったけれど、彼女はよく「このデザインについてどう思う?」と、小さな私とクリエイティブな話をしようとしてくれた。それは母娘の間に生まれた美しい意見交換だったわ。母は私が独自のセンスを持っていることを早い段階から気付いていてくれたのだと思う。その後も私は自分らしいスタイルを探して、ピアスをしたり、髪を青く染めたり、タトゥーを入れたり……。とにかくいろんなことをしたわ。ラッキーだったのは、何をしても反対せずに受け入れてくれる環境だったことだと思うわ。   ──ジュエリーやファッション以外にはどんなクリエイションが好き? コンテンポラリーデザインの家具が大好きなの。家具のメカニズムを探求するのはとても楽しい行為だわ。それから娘のおもちゃからもたくさんのインスピレーションを得るわ。現代的でスマートなおもちゃからアンティークトイまで。素材の使い方が興味深いの。ちなみに今回の滞在中にはまんだらけで新しいおもちゃを買う予定よ!   ──滞在中、ほかにどんなプランが? 制服を買いたいわ!日本の女子高生が着ているような制服をね。私はあらゆるタイプの制服が好きなの。スコットランドの民俗衣装や修道女が着るガウンもお気に入り。とても温かくて機能性もあるのよ!滞在中は、日本のお客さんに会うことも楽しみだわ。   ──では、最後にジュエリーとファッションのコーディネイトの楽しみ方についてアドバイスを! 小ぶりのジュエリーならリミットなど考えずにたくさん身に着けていいと思うわ。ただしコーディネイトするときには、ひとつのストーリーが必要。今日はどんな気分なのか、どんな女性像をテーマにするのか、など。その軸さえあればどんなに着飾っても大丈夫。私は特に手もとにジュエリーを着けるのが好き。だって、いつでもジュエリーを眺められるし、大好きなジュエリーを眺めているととても気分が良くなるから!     デルフィナの内側から溢れ出るクリエイションへの情熱が込められたコレクションは、「美しい」といった単純な言葉では表現しきれない、もっと人間的で、もっと奥深い魅力を秘めている。ゆっくりと時間をかけながら、ジュエリーと身に着ける自身が一体となっていく―—。そんな過程も楽しむことができるジュエリーだ。  
Delfina Delettrez
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  DOVER STREET MARKET GINZA 住所/東京都中央区銀座6-9-5 ギンザコマツ西館 Tel/03-6228-5080 営業時間/11:00~20:00(金土 11:00~21:00) 定休日/不定休  

Delfina Delettrez(デルフィナ・デレトレ)   ファインジュエリーブランド、Delfina Delettrezのデザイナー。骨や目などのパーツを取り入れたゴシック調のデザインが特徴。 OPENING CEREMONYやColette、LUISA VIA ROMAなどの世界有数の高感度なセレクトショップなどでアイテムを展開。日本ではDOVER STREET MARKET GINZAを中心にコレクションを発表している。Fendi(フェンディ)のデザイナーシルビア・ベントゥリーニ・フェンディの娘。
photos:DOVER STREET MARKET Interview:Etsuko Soeda  

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