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Culture Post

大人も子どもも「あ」いた口がふさがらない!『デザインあ展』


現在、東京ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTで開催中の展覧会『デザインあ展』。
佐藤卓、中村勇吾、小山田圭吾——今をときめくクリエイターたちが手がけるNHK Eテレの教育番組『デザインあ』の発展企画とあって、番組の放送開始当初と同じく、ギョーカイ関係者やデザイン好きの間で「もう見ました?」が挨拶代わりになるほどの話題と注目を集めている。
さらに、番組を見たことのない親御さんから、デザインの話にはまだ早いと思われるちびっこまでが、まるで一斉に雷に打たれたかのごとく「面白かった!」「すごかった!」「あっ!あっ!」と繰り返すのだからただ事ではない。
記憶や証言を元に展示内容をいくつか書き出してみると、
 
大人も子どもも開いた口がふさがらない!『デザインあ展』
大人も子どもも開いた口がふさがらない!『デザインあ展』

左上:tha ltd.+小山田圭吾(コーネリアス)「モノ・オトと映像の部屋」 左下:ギャラリー2全景 右:plaplax「あ」の広場 (Photo:吉村昌也)
 
・平たい台の上にマグロの握り寿司が十数個、豆粒ほどに小さなものから幅数十センチのギガントなサイズまで小→大の順にずらり並んでいる眺めを前にして絶句。(題名「ちょうどいい」)
 
・中央に様々なモノが置かれた部屋。四方の壁に丸いものや四角いものが矢継ぎ早に映写され、大音量で「丸ぅ〜とぉ〜四角ぅ〜」と繰り返す歌に合わせて子どもたちが超絶ファイテンション状態で狂喜乱舞中。(「モノ・オトと映像の部屋」)
 
・苔むした幅数メートルの巨大な「あ」の字を窓ガラス越しに見ながら、小学校の学習机に大人までもが腰掛け、自習っぽく「あ」の字をひたすら描いている。(「『あ』の広場」&「作業机」)
 
……と聞いて、「いったい、これのどこが“デザイン”なんだ!?」と思ったあなた。いらっしゃいませ。
そう、ここには遠巻きに眺めてありがたがったり、にわかにウンチクを披露してドヤ顔ができるような、レアでオシャレな“デザイン家具”はまったくない。“デザイン家電”も“デザイン雑貨”も、ただのひとつも置いてない。
……何故なら、そんなものはそもそも存在しないから。
 
もし、建物にドアがなかったらどうなるか。パンツェッタ・ジローラモの独り語りで繰り広げられる思考実験(「ない世界」)。
便座とトイレットペーパーとの適切な距離を、わざわざシミュレーションで検証する(「ちょうどいい」)。
あらゆるものの構造を探る、例えばハッサクは果肉の1粒ずつ亀の子たわしであれば繊維の1本1本に至るまで分解し、並べてみる(「解散!」)。
……といった感じで、元々の番組自体、ほぼすべてが身のまわりにあるものばかりで構成されているのだ。
 
およそオシャレとは無縁と思われるコンビニグッズや、100均で適当に買った文房具、そば屋の入口によくあるタヌキの置物、自動車、建築や森ビル、果ては街全体、社会そのものに至るまでーー。
そもそもデザインとは、何かのためにモノを作り出したり整えたりする行為のこと。つまり現代社会とは、人が生きていく上で関わるものほぼすべてがデザインされている状況のことでもあって、なんとなくオシャレな様子のモノだけを指して“デザイン○○”と呼ぶ風潮自体が矛盾に満ちている。
そうではなく、当たり前に思われがちな身のまわりの物事に目を向けて、それがどうして必要なのか、何故そのような形をしているのかを考えることで、“デザインマインド”を育んでいこうーーそれが『デザインあ』という番組のコンセプトなのだった。
 
大人も子どもも開いた口がふさがらない!『デザインあ展』
大人も子どもも開いた口がふさがらない!『デザインあ展』

左:佐藤卓デザイン事務所「あな」 右:佐藤卓デザイン事務所+折形デザイン研究所「おりがみ」 (Photo:吉村昌也)
 
今回の展覧会は、その番組の映像や音を発展させ、ゲストのクリエイターたちを迎えて立体的に構成されたもの。しかもそれが意表を突くほど面白く、子どもたちは口が「あ」の字に開いたまま夢中になり、大人は新しい気付きの連続に「あっ!」「ああっ!」と声を上げ通しで、まさにアンビリバボーな光景が広がっている。
総合監修をグラフィックデザイナーの佐藤卓が、映像監修をインターフェイスデザイナー/映像ディレクターの中村勇吾が、音楽をコーネリアスこと小山田圭吾が手がけている。今の日本を象徴する才能だ。さすがだなあ。という話は、その体験を後から再び味わい尽くしつつ語られるべき話であって、3人の名前だけを先に聞いておき、シャレオツだ、それを知っておけばもうわかった、なんかモテそう、と身構える癖が付いてしまった自称デザイン亜ディクトこそ、会場で滝行のごとく怒濤の「あ!」を浴びまくり、これまでの視点がガラガラとアBORN。
そうやって“デザイン”をダシにキャッキャウフフしたいと目論む若者、「デザインなんて自分にはあまり関係ない」と眉をひそめていた人、純粋無垢な子どもたちまでもが「けしからん!いいぞもっとやれ」状態で呉越同舟、まさに「あ!」まみれの自分デザイン大会へと超展開。
そんなわけで、「あ!」するか「あ!」しないかは……あなた次第です。
 
大人も子どもも開いた口がふさがらない!『デザインあ展』
大人も子どもも開いた口がふさがらない!『デザインあ展』

左:tha ltd.+小山田圭吾(コーネリアス)「モノ・オトと映像の部屋」 右:「みんなの『あ』」 (Photo:吉村昌也)
 
 
21_21 DESIGN SIGHT企画展『デザインあ展』
期間/2月8日(金)〜6月2日(日)
場所/21_21 DESIGN SIGHT 東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
 
information
21_21 DESIGN SIGHT:03-3475-2121
HP/www.2121designsight.jp

 

profile

深沢慶太(ふかさわ・けいた)
 
フリー編集者/ライター/『Numéro TOKYO』コントリビューティング・エディター。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numéro TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集・執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集や、編集者9人のインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN新社)などがある。

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