トレンド速報、2013春夏のキーワードは『ミューズ回帰』 | Numero TOKYO
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トレンド速報、2013春夏のキーワードは『ミューズ回帰』


ヌメロ・トウキョウのエディターが、コレクションで見聞きしてきた情報から今季取り入れたいキーワードをピックアップ。2013年春夏コレクションで、一番に感じたトレンドはずばり『ミューズ回帰』。周りと一線を画するスター性を持ち、固定概念に縛らず存在感を放ってきた『ミューズ』たち。今季はそんなミューズのような気分で、さまざまな顔を楽しむ柔軟な感性を持ち合わせたファッション観にフォーカスしたい。
 
photo/1. ブロガーなど誰でもミューズになれる今、多くのデザイナーが唯一無二の真のミューズ像を模索。ロエベはサルバドール・ダリ夫人ガラからインスパイアされたコレクションを発表。 2. 今季再復活したお腹を見せるコーディネートはマーク ジェイコブス。 3. すべて2人ずつ、双子!?な演出で、透け感のあるダミエ柄をぐっとチャーミングに演出したルイ・ヴィトン。4. トム・フォード監督の映画『シングルマン』でのジュリアン・ムーアの着こなしはまさにミューズ・スタイル!
 
90年代が堂々のカムバック
 
「お待たせ!」まさにこんな気分の春夏。私たちが青春時代に夢中になったスタイルが長い期間を経てトレンドにカムバックした。今季はすばり1990―2000年代大旋風と呼んでも過言ではない。あの頃一世を風靡したトム・フォードのつくり上げるセクシーで強い女性像、ヘルムート・ラングが貫いたミニマルなスポーティシック、そしてステラ・マッカートニーが体現したストリートな香りのするグラマラス。どれもスタイリングのエッセンスではあるが、体験者にとっては「そうそう、この感じ」という“気分”が満載なのだ。コレクションで大きな注目を集めたエディ・スリマン率いる新生サンローランは、ウエスタンのエッセンスを織り交ぜたコレクションで、メゾンの新しいエレガンスを展開。私たち世代のデザイナー、フィービー・ファイロがセリーヌから打ち出したのは、バギーなシルエットのパンツを腰ではくという、まさに“着方(スタイリング)”の提案。また足元にはファーをあしらったスポーティなサンダルを合わせることで、マニッシュなパンツルックをよりストリートかつラグジュアリーに仕上げた。同じく同世代のヴィクトリア・ベッカムが取り上げたのは、スポーティなブラのストラップを肩からのぞかせるスタイル。素材にソリッドな布帛を使うことで、ハンサムに演出した。
 
キーワードはストリートのエッジ
 
ストリートとグラマラスを融合させた、“クール”世代が感じる“気分”。セクシーなドレスにペタンコシューズでバランスを取る、クチュール感のあるアイテムをデニムスタイルに取り入れる、など相反するテイストをうまく組み合わせることで生まれるヌケ感、行き過ぎないバランス感こそが今シーズンと私たち世代に共通するファッション観である。“コーディネートでバランスを取る”代表格と呼べるのが、ランジェリーを見せつつも、セクシー路線ではなく、スカートの丈やヒールの高さなど計算し尽くされたバランスで“真面目顔のナーディ”な印象に仕上げた、ルイ・ヴィトンやミュウミュウ、ロエベ。マイケル・コースやマーク ジェイコブスに登場した、ショート丈のトップでおなかを見せる提案も懐かしさを感じる読者も多いだろう。どこかストリートの香りがするというのも、今季のキーワードに共通するポイント。世界中の女性を魅了しているセリーヌやサンローラン、イザベル マランやエミリオ・プッチに共通するキーワードだ。頑張りすぎたモードから一線を画する、ヌケ感。正統派ではなく、“悪さ”“危うさ”の放つ魅力こそ、スタイリングに欠かせないエッジなのだ。
 
魅せるのではなく楽しむ“美”
 
メゾンならではの完璧なカッティングで、強さを感じさせるセンシュアルなコレクションを発表したのはグッチ、ランバン、エミリオ・プッチ。ディテールにスポーティだったり、またメンズライクなものを用いることで、決してセクシーの一言で終わらせることのできない、どこかインテリジェンスが光るデザインになった。これも“真面目顔のナーディ”スタイルに共通する、ファッションは異性に媚びるためのものではなく、自分の喜びとして纏うといったメッセージを感じる。クチュールのような曲線とストイックな直線の相反するフォルムで、ドラマチックかつミステリアスな女性像を提案するのはジバンシィ、バーバリー プローサム、バレンシアガやクロエ。今季のキーワードである二面性が融合したコレクションだ。またプリントが印象的だったボッテガ・ヴェネタも、カテゴリーに分けられない女性の多面性を、フェミニンなフラワーモチーフにスタッズを施すことや、また正統派のクラシックなドレスの背中を大胆にカットしたデザインで表現。女性の二面性という魅力をコレクションに落とし込んだ。春夏というと定番となってきたプリントも、今年はエルメスのように全く違った柄の組み合わせや、ディオールのようなメタリックとシフォンなど、柄や異素材を組み合わせることでカテゴライズできない面白さ、個性を打ち出している。
 
大人の余裕で着こなす季節
 
最後に注目カラーとしてピックアップしたいのは白。今季の白はストリートな白だ。ストリートといっても、バギーパンツはシルクサテン、タンクトップはシルクジャージーなど、大人だからこそ楽しめる素材感がキーポイント。カジュアルと一線を画する、あくまでファッションとしてのストリートを意識して欲しい。またカラーブロッキングの進化系としてはバウハウス的シルエット、色使いに注目。ボトムとのメリハリでジャケットのボクシーなシルエットを強調したシャネルや、スクエアな色のブロックを用いたエンポリオ アルマーニ、フェンディは今シーズンのモダンスタイルの代表格と呼べるだろう。
 
一言で言うと、今季のトレンドは一筋縄ではいかないスタイル、お洒落好きが待ち焦がれていたファッションのシーズンだ。コレを着ればお洒落に見える、という万能な逸品は、はっきり言ってこの春夏には存在しない。何よりも先に紹介した着こなしのディテール、バランスで魅せてゆくことが、今季の気分をつくり上げるカギとなるからだ。
 

Text: Akiko Hayashida

 
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