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ディオールの名香「ジャドール」のミューズ、シャーリーズ・セロンに独占インタビュー

ディオール(Dior)の名香「ジャドール(J'adore)」が時代の機運を受け、新しい香りをこの秋に誕生させた。2018年10月末から放映中の新たなコマーシャルフィルムを撮り下ろしたミューズ、シャーリーズ・セロンに撮影秘話や表現した女性像などについて独占インタビュー。彼女の言葉をひもとけば、心のままに美しく進化することを恐れないディオール ウーマンの真髄を垣間見ることができるはず。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年11月号掲載)

意思のままに進化し続ける稀有な名香

初代ジャドールが誕生してから来年20年を迎えようとしている。ムッシュ ディオールが愛した花々へのオマージュとしてクリエイトされた甘美な香りは、女性の持つ揺るぎない自信と気高さが交差する。そんなブランドを代表するフレグランスのコマーシャルフィルムを手がけたのは、ネクストステージの女性を鋭い視点で捉える奇才ロマン・ガヴラス。ミューズを務めるのはもちろん、14年間アイコンとして君臨してきたシャーリーズ・セロンだ。

──新生ジャドールのフィルム撮影は順調でしたか。

「素晴らしい撮影だった。ため息が漏れるほどのセットに囲まれて過ごした5日間は、まさにチーム一丸となって冒険に出たようなイメージ。様々な分野のプロフェッショナルたちのクリエイションが呼応し合って最高の作品が生まれました」

──ストーリーを表現するにあたって、監督のロマンから何かリクエストはありましたか。

「壮麗な空間の中で求められたのは、女性としての極上の美を表現すること。これまでミューズとして大切にしてきたジャドールのエレガントな伝統を守りつつ、時代が求めるフェミニニティへの新たな挑戦を映し出すよう努めました」

──一人で演じてきたこれまでのフィルムとは異なり、古代風呂で15人の女性を従えているのが印象的。その意図は?

「従えるというよりは、共に歩いているイメージかしら。古代風呂に立ち込める熱気は、いま世界中で起こっているフェミニズムのムーブメントを表しているの。心身を清めて、再生をもたらす沐浴という行為を経て、裸足で歩き出すというシーンは、当事者意識を持ってそれに臨む果敢な姿勢を表している。15人という人数は、国籍や年齢の多様性の象徴。それと同時に、女性が持つ繊細な内面をそれぞれの女優が演じているという伏線もあるわ」

──あなたが考える女性像とは。

「女性は強く、時として弱い存在。そしてセクシーね。魂を揺さぶられて怒ることもあるし、魅惑的な悪女にもなり得る。多面的だからこそ葛藤もあるし、複雑な存在だと思う。でも、ロマンは現代女性の代表としてそれを臆さず表現するよう、背中を押してくれたの」

──新しい香りとゴールドのボトルはどんなところが気に入っていますか。

「これまでのジャドールのDNAを忠実に継承しながらも、ジャスミンのみずみずしさや入り組んだ花々の香りが繊細で好き。その調べに女性らしい温かみと煌きを感じます。ボトルに採用されているゴールドは、神 話にもよく登場する異世界を想起させるようなカラー。その色彩によって誘われた新しい世界で、私たち女性がどう進化したり、パーソナリティを引き出せるのかをジャドールは問いかけているように思うわ」

常に真実と美の追求者でありたい

南アフリカ共和国という国に生を受け、そして決して穏やかとはいえない家庭環境であったことを考えれば、シャーリーズのキャリア形成は常に順風満帆というわけではなかっただろう。「愛されるには輝いていなければならない」というボードレールの言葉のとおり、自身、そして周囲に常に疑問を呈することで、自分なりのフェミニニティと成功を築き上げてきた女性だ。

──今年3月のインターナショナル・ウィメンズデーでの「大切なのは自分の人生に正直であること。やりたいことがあったら、どんな小さなことでも、どんなに無茶に思えても挑戦してみること」というあなたのメッセージに勇気をもらいました。これまでに決断した大きなチャレンジを教えてください。

「幼い頃は困難なバックグラウンドで生きてきた。でもその経験があったからこそ、正しい優先順位における意思決定や大切にすべきものが明確になったと思う。人生というものは儚く、いつ何どき他人の手や自然の力によって奪われてしまうかわからない。だからこそ、挑戦しなかったことによる後悔は決してしたくない。失敗を恐れるくらいなら、勇気を持って行動すべきよ」

──今のようなスタンスを取るようになった契機はあったのでしょうか。

「幼い頃から両親や教師、あるいは他人から言われた言葉をうのみにすることはなく、普段の生活でも社会問題でも、心から納得できなければ必ず質問を投げかけるような子どもだった。新しいことに挑戦するときも、他人がクレイジーだと反対しても、自分がしたいことならイエスよ。道を誤ったこともあるかもしれない。でもそれは自身で決断したことだから責任を持って受け入れるし、逆に成功においても、私が本当に求めたことによって進んだ道の果てにつかみ取ったもの。人生最後の瞬間に、『他人のためではなく自分の人生を歩み、そして自分のためにこの生を全うした』と思えるようにしたいの」

──では、女性として生まれたことにも意味があった?

「もちろんよ! 今この時代に生きていること自体が、女性として幸せで素晴らしいこと。映画業界のみならず、女性の社会問題はこれまでもいくつかのターニングポイントを迎えてきたけど、残念ながら全て解決しているとは言い切れない。でも、女性の地位は確実に変化しつつあるし、世界中が一致団結して、この問題について意見を持つべき。諦めてしまって、再びあやふやな立場に押し戻されるのではなく、今度こ そ共に前進して、乗り越えていくべき。まさに今回のフィルムのようにね。そんな動きに“女性として”参加できること、その瞬間に立ち会えていることを誇りに思うわ」

──いま世界中が議論しているフェミニニティの在り方について、あなたはどう定義しますか。

「フェミニニティの定義は一つしかないという主張があるけれど、それは嘘よ。私は逆に、いろんなエッセンスの組み合わせによって、その人ならではのフェミニニティがつくられるものだと考えている。自分に正直であることで、その人のフェミニニティが生まれ、それを糧に生きていくことが人生の真髄。自分に起こる思いもよらない外的困難や、内面の葛藤を受け入れる強さもまた、フェミニニティの一部。そのなかで、しなやかに生きる姿こそが美しいし、真の女性らしさだと考えるわ」

──パーソナルな香水の楽しみ方を教えてください。

「朝は早いし、子どもたちの学校の送り迎えもあるから、一日にいろんな香りをつけるのは、私のライフスタイルにはマッチしないわ。出かける前に香水をサッと纏ったら、何時間かした後、例えば買い物をしているときなどの何気ない瞬間に、ふんわりとその香りが蘇る瞬間があるでしょ。繊細な香りの違いを感じたり、甘美な香りで女性であることをふと思い出したり。そんな小さなサプライズが一日中続くのが、私の香りの楽しみ方。忙しい日々の中でふと、こんなに素敵な香りを身につけていたのかと感動したり、女性としてあらためて自信を持てたりする。リマインダーのように作用するジャドールを堪能しているわ」

──美には必ずその人の生きざまや内面が介在すると思いますが、どのような女性を美しいと思いますか。

「優しさや親切心は時としてあまり評価されないけど、それこそが本当の美しさだと考えます。過剰な権利の主張や、保身に走るような自己中心的行為は、視野を狭めてしまう。自分を助けていると思っていたのに、結果として自身の首を絞めて窒息しそうな気持ちになってしまうのは皮肉なことよ。他人の立場に立って物事を考えて行動を起こすことや、自己犠牲を払っても、優しさや思いやり を発揮できるというのが真の美しさ。これは子どもたちにも常日頃言い聞かせているの」

──それは一方で、強い意志も必要ですね。優しくあること、そして強さを持ち続けることの原動力を教えてください。

「家族の存在が、私を強くしていることは間違いないわ。でも、公私ともに関わっている女性たちが人格者であることも大きいわね。曖昧な立場や意見では決して満足することなく、常に自分自身に挑戦する。そして周囲の人間にも同じように新しいことを提案し続けるから、私も全力で応えようとするし、互いが共鳴し合えるの。常に自分にインスピレーションを与えてくれる人と時間を共に過ごすというのは、私が行ってきた意思決定の積み重ねでもある。男女問わず、そういう人たちに囲まれていることはとても幸運なことよ」

──最後に、Numéro TOKYO2018年11月号は“NOIR”がテーマです。黒と聞いて、あなたが持つイメージは?

「ブラックはとても力強くて、パワフルな色よ。不吉と思う人がいるかもしれないけど、私はそのイメージを決して恐れることはないわ。とてもパワフルであり大胆不敵なブラックに魅了されているわ」

ジャドール アブソリュ オードゥ パルファン[50ml] ¥15,000、[75ml] ¥18,000/Dior(パルファン・クリスチャン・ディオール)Photo: Shinmei
ジャドール アブソリュ オードゥ パルファン[50ml] ¥15,000、[75ml] ¥18,000/Dior(パルファン・クリスチャン・ディオール)Photo: Shinmei

このたび、名香「ジャドール」にディオール パフューマー クリエイターのフランソワ・ドゥマシーが新たな命を吹き込んだ。多面的な女性像を演出するために採用したのは、性格の異なる2つのジャスミン。強く結び合わせることで本能的な高揚感を呼び起こしつつ、ローズとオレンジブロッサムが蜜のような濃密さと気品を覗かせる。戦時中、フェミニニティを抑制された女性に向けて1947年に発表された“8ライン コレクション”の哲学を伝承したアンフォラボトルもアップデート。ゴールドが持つリュクスなイメージはそのままに、よりなだらかなフォルムへとシフト。優美な曲線を再現することで女性が併せ持つセンシュアリティを讃えた。

Photos : Parfums Christian Dior Text : Natalie Lima Konishi  Edit : Hisako Yamazaki

Profile

Charlize Theron(シャーリーズ・セロン)1975年8月7日生まれ、南アフリカ共和国出身。2003年映画『モンスター』で実在の連続殺人犯アイリーン・ウォーノスを演じ、アカデミー主演女優賞、ベルリン国際映画祭銀熊賞、ゴールデ ングローブ賞 主演女優賞(ドラマ部門)などを受賞。12年に養子を迎え、現在は二児の母に。究極のフェミニニティを表現するディオールの香り「J’adore」のミューズを務める。

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