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気になるiPad、どうなの3D/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.4

iPadによる変革はあるのか?iPadがウケる理由
 
──身の回りにもiPadを購入した人は結構いますが、ある統計ではiPadに興味を持っているのは、圧倒的に30、40代のようですね。iPhoneユーザーも30、40代が多い。
 
K「50、60代はどうしてるんですかね?」
 
I「興味を持っている人もたくさんいると思いますけどね、要するにアップル世代でしょ?50、60代はやっぱり回顧コンテンツに走ると思うし」
 
K「20代はそれどこじゃないという感じじゃないですかね。詳しくないから滅多なことは言えないけど、iPhoneはもちろん一線上に並べることはできないが、ミクシィ、2チャン、ブログフォームみたいな形で、すべての人が最近はつぶやきに換言されて数が増えたけど、つぶやかないまでも日々の雑感を語り、読み合って、何人の人が読んでいるかがわかり、その人数が減ったり増えたりすることに一喜一憂している間に時が過ぎるというメディアであって。なんかすごい日本っぽい気がするんだよね。基本的には日記を読み合うわけだし、日記の中に全部入っていて。批評も哲学的なことも、要するに素人の日記文学みたいなことになっていて、それが蔓延してみんなで読む。だからそれが嫌だと思っている人に対して、アップルが持っている力というか、和風じゃない力(笑)をいつ見せよう、いつ見せようと、何回かいろんな方法で見せてはみたんだけど、やっぱそれよりは、日本人にはミクシィの会員が何万人突破とか、ブログフォームが何万人といっちゃったのを、最終的にアップルがまくって、こんなにスマートでおしゃれで、日本人の「私の日記をあの人は読んでくれたの? 読んでくれてない?」という演歌めいたものをなくしたプレゼンテーションがうまくいったんじゃないですかね。僕のイメージだと、それこそ伊藤先生の世代で、VR(ヴァーチャルリアリティ)、インタラクティブって言い始め、夢見ていた世代は、よくある話ですけど、SFが実現するとディストピアっていうパターンで、美的にもコンセプトにも高い志があって始まったものの、いざ現実となりwindows 95、インターネットや携帯が定着してみたら、素人の日記の書き合いという現状が蔓延して、これは違うなという感じで離れていくわけじゃないですか。その離れていった人をまた戻って来させるきっかけ、それをiPhone、 iPadっていうのは持っているのかなという気がしましたね。僕はまだ持っていませんが」
 
I「iPadもインターフェイスの問題だから。僕らが90年代から始めた、ICC(NTTインターコミュニケーションセンター)でやろうとしたことは、インターフェイスから一回離れたかったということがある。どんな洗練されたインターフェイスができようが、究極的な情報の入出力の問題は、菊地さんが言った全身的な没入感のあるヴァーチャルリアリティとかドッペルアイなんかの脳神経に直接情報を送るシステムの中で、90年代にある程度達成されたわけですよね。だから、後はその次のステップなんだけど、今の状況を見ると、また元に戻っている。ベクトルの向き方が逆方向になってしまった。イメージやテキストベースだし、ポスト・シンボリック・コミュニケ―ションの地平から離れて、退化しているといってもいい。でも、それはある意味でしょうがないのかなとも思う。テクノロジーが先行していくところを人間的なカスタマイズで再構成しようという意味合いはわかるんだけど。だからiPadもある程度は普及すると思うんですよね。でもなんか、そんな大きくは情報構造というか情報環境は変わんない。既に先行するインターフェイスでやってきたことを特化して洗練させてるだけだから、基本的には大差はないような気がしますね」
 
K「まあ30~50代が飛びついてる最大の理由は、ギャグみたいなことを言いますけど、老眼に優しいんですよね」
 
I「まだ使ってないけど、iPadってベッドの中に持ち込めるのかな。寝ながら読めるの?」
 
K「紙じゃないから柔らかくまとわりつかなくて、落ちてきたら痛いというのがありますよね」
 
I「娼婦と本はベッドに連れ込むことができるってベンヤミンの言葉があったけど(笑)、ベッドに連れ込むと、目が疲れそうだな」
 
K「書見台が既に発達していて、ベッドの脇にくっつけるとiPadが置けて、自分の向きたいほうに向けられるようなグッズがあるんですよね。もう出回ってるけど、それはちょっと流行ると思うんですが」
 
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