愛媛の自然と地元食材を堪能。森と水庭に浮かぶオーベルジュ「時地人 – JIJIJIN Matsuyama」
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愛媛の自然と地元食材を堪能。森と水庭に浮かぶオーベルジュ「時地人 – JIJIJIN Matsuyama」

2025年9月、愛媛・砥部町の森にリブランドオープンしたオーベルジュ「時地人 – JIJIJIN Matsuyama」。全室スイートで通谷池を望む客室、砥部焼に盛られた瀬戸内の美食、地元アーティストの作品に彩られた空間。森と水庭に抱かれながら味わう、ここにしかない“ローカルラグジュアリー”をレポート。

わずか10室。全室スイートの大自然に囲まれた絶景オーベルジュ

松山市内から車で20分ほど。到着してまず目に飛び込んでくるのは、「ため池百選」に選ばれた通谷池。深い緑に囲まれ、時間とともに表情を変える翡翠色の水面を背景に佇むホテルは、まさに“水庭に浮かぶオーベルジュ”です。

フロントやレストランがある本館と宿泊棟は分かれており、客室へは専用のカートで移動。全室スイートタイプの客室と、よりプライベートな滞在を叶える離れが2棟の全10室で、すべての部屋にテラスを完備。通谷池の景観を望みながら、非日常のひとときを堪能できます。

今回宿泊したのは「MORI SUITE」。広々とした客室はリビングルームとベッドルームが分かれ、最大4名までゆったりとくつろげます。木のあたたかみを感じる落ち着いた空間は、どこかレトロな趣も漂います。


開放感あふれるテラスからは、水面と森の景色を独り占め。


広々のバスルーム。ガラス張りの大きな窓からは視界いっぱいに景色が広がり、伝統工芸とモダンな空間が融合したバスタイムは、ここでしか体験できない特別なひとときです。

ランプシェードや洗面台のボウルも砥部焼で統一され、館内のあちこちに愛媛の伝統が息づいています。そんな発見もまた、滞在の楽しみのひとつです。


夕暮れ時の景色。茜色に染まる水面は、時間とともに光や色を変え、刻々と移ろう表情は格別。ひとときごとに変わる景色を心ゆくまで眺められるのも、この場所ならでは。

愛媛の恵みを砥部焼で味わう贅沢なコース体験

夕食は本館のレストランで。瀬戸内の新鮮な魚介や自家菜園の野菜など、地元の恵みをふんだんに使ったコースが並びます。砥部焼の器に盛られた料理は、素材の瑞々しさをそのまま感じられ、この土地ならではの味覚を存分に楽しめます。季節ごとに旬の食材を取り入れ、愛媛県新居浜市出身のシェフ、山下僚介さんが一皿ごとに工夫を凝らして仕立てています。

それぞれのメニューには、使用している食材の愛媛での産地が記載されており、地元の恵みをより身近に感じられます。

アミューズは旬の鱧を夏野菜とトマトのガスパチョでさっぱりと仕上げ、淡白な旨味が野菜とトマトの爽やかさに引き立てられています。ピンクの器には、三崎産のウニに青のりとわさびを添えて米粉でサンドした一品。米粉の軽やかな食感とともに、とろける甘みとほのかな苦みが絶妙に重なり、あと引くおいしさです。

地元で採れた焼き野菜はシンプルにお塩だけで味付け。とうもろこしの甘みや、いちじくやブドウなどのフルーツも加わり、素材本来の旨みをダイレクトに堪能できます。右は北宇和郡松野町で捕れた鰻。シャキシャキのルッコラと赤玉ねぎ、クレソンの香り高いジェノベーゼソースが絡み、米っ娘卵に巻いて食べると、食感と香りのコントラストがさらに際立ちます。

メインはお肉とお魚。伊予牛のステーキはミディアムレアに焼き上げ、赤ワインソースと生胡椒が香ります。肉の旨味とソースの深み、胡椒の爽やかな刺激が絶妙に調和。キジハタのアクアパッツアは炭火で香ばしく焼き上げ、にんにくの香りが広がる泡のソースと出汁で仕上げた優しい味わいです。

食事の最後は渡り蟹のパエリア。トマトとヨリエビを使い、塩は加えず素材そのものの塩味を活かして旨味を引き出しています。デザートは桃のブランマンジェ。地酒の酒粕で濃厚に仕立てた風味に、桃のジュレとコンポートのフレッシュな甘みが重なり、締めにふさわしいさっぱり感です。

また、お料理ごとにセレクトされたワインや地酒と一緒に楽しむことも可能。こちらは愛媛県西条市で製造されている「石鎚」。料理を引き立てる穏やかな香りと、すっきりとした口当たりでした。

翌朝は少し早く起きてお散歩へ。澄んだ空気の中、木々の緑や静かな水庭を眺めながら、心落ち着くひととき。

朝食は愛媛ブランド豚の甘とろ豚やソーセージ、地野菜のサラダや焼き野菜、ポーチドエッグなど、地元の食材がたっぷり。朝からお腹も心も満たされました。

森に抱かれた非日常空間や、地元食材を活かした料理、砥部焼の器に彩られた細部まで、愛媛ならではの魅力が詰まった「時地人 – JIJIJIN Matsuyama」。朝の静かな水庭や暮れ時に茜色に染まる水面など、刻々と移ろう自然の表情など贅沢な体験は五感を刺激してくれます。紅葉が美しくなるこれからの季節に足を運ぶのも良さそうです。

時地人 – JIJIJIN Matsuyama
住所/愛媛県伊予郡砥部町宮内1622-7
TEL/089-960-7501(9:00〜18:00)
URL/https://jijijin.com/matsuyama

Profile

坂井直美Naomi Sakai ウェブ・コンテンツ・ディレクター/プランナー。ファッション&カルチャー系 WEB マガジン「HONEYEE.COM」の編集・プランナーなどを経て2021年春から『Numéro TOKYO』に参加。Numero.jpにて最新のトレンドを魅せるコンテンツ作りを目指し日々プランニングに従事。服はもっぱら白か黒。今年は色物をワードローブに取り入れてキャラ変模索中。
 

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