約6年の時を経て再度結集したウォーペイントの最新アルバム | Numero TOKYO
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約6年の時を経て再度結集したウォーペイントの最新アルバム

最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、LA出身の4人組女性アートロック・バンドWarpaint(ウォーペイント)の最新アルバム『Radiate Like This』をレビュー。

独立した個性が引き立て合う、ドープで妖艶な大人のトリップホップ

「そうそう、これこれ!」という言葉が思わずついて出た。LA出身の4人組、ウォーペイントの約6年ぶりのアルバムだ。2010年前後にシーンに登場し、バンド・サウンドとエレクトロニックなエフェクトを組み合わせたダークな音楽性や、メランコリックなソングライティング、実験精神の迸るメンバーの間に流れる奔放な空気感、そして知的かつクールで妖艶な佇まいでたちまちにリスナーを虜にした彼女たち。2010年の『The Fool』や2014年の『Warpaint』なんかは私自身も夢中になって繰り返し聴き、憧れを抱いたものだ。女性プレイヤーが昨今のようにフェスのヘッドライナーを当たり前に飾るようなこともなかった当時には、ある種エポック・メイク的な存在だったとも言えるかもしれない。

2016年に3枚目のアルバム『Heads Up』をリリースした彼女たちはその後しばらく個々の活動にシフト。思えば彼女たちも、ドラムのステラを除いていまや全員40代だ。ギター/ヴォーカルのテレサは息子を育てていたりと、それぞれに人生の過渡期を懸命に生き抜いてきたのだろう。だからこそ、約6年の時を経て再度結集し、一つの作品をまた作り上げたということはある意味奇跡に近いかもしれないし、嬉しくも感じる。

冒頭に書いたような、クリエイティヴィティーは今作でも健在だ。ただ、ダンサブルなアプローチも見せていた前作に比べると今作はもっと濃く、そしてドープだ。ジェニー・リーによるアグレッシブで挑発的なベースはこれまで以上に低音を太く強調しつつ、ステラのドラムは打ち込みと絡み合いながらダビーな音像に。淡く絡み合うテレサとエミリーのギターや気怠げなヴォーカルとコーラスはよりアトモスフェリックに、妖しげに。さらに今作では、ピアノやストリングス、ハープシコードのような音色、鐘の音など、これまでの作品にはなかったような音のパレットを用いて、まるで瞑想のように、楽曲の深みへと引き込んでいく。バンド・サウンドを志向しながらも、かねてから(特にメイン・ヴォーカルを多く担当するテレサは)ヒップホップもそのルーツに挙げていた彼女たちだが、今作ではオルタナティヴ・ロックとトラック・ミュージックの境界は曖昧にぼかされており、トリップホップとも呼びたい作品に仕上がっている。

ウォーペイントの面白いところであり、魅力的なところと言えば、全員がソングライティングをし、また曲によってテレサ、エミリー、ジェニーの3人がそれぞれメインヴォーカルを担うことがあるというところ。それぞれ音楽の好みも微妙に違う彼女たちだが、作品の中で個性がぶつかるような印象はない。互いの好みを尊重し合い、引き立て合いながら、それぞれの個性とスキルを版画絵のようにレイヤードしていく在り様は、結成から10年以上経ちそれぞれのキャリアと人生を歩む今も変わることがないことに感銘を受ける。容易には馴れ合わないが確かに信頼しあう、独立した4人の女性たちのタッグとしてのウォーペイントというバンド。マイペースでも構わないので、これからも折を見て集結してもらいたいものだ。

Warpaint『Radiate Like This』

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Text:Nami Igusa  Edit:Chiho Inoue

Profile

井草七海Nami Igusa 東京都出身、ライター。主に音楽関連のコラムやディスクレビュー、ライナーノーツなどの執筆を手がけている。現在は音楽メディア《TURN》にてレギュラーライターおよび編集も担当。

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