日本生まれカリフォルニア育ちのオルタナティブR&Bアーティスト、Hong Kong Boyfriendのニューシングル | Numero TOKYO
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日本生まれカリフォルニア育ちのオルタナティブR&Bアーティスト、Hong Kong Boyfriendのニューシングル

最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、LAを拠点に活動するニューカマー、Hong Kong Boyfriend(ホンコン・ボーイフレンド)が4月7日にリリースした新曲『Sharlene』 をレビュー。

新人とは思えない才能とセンスで話題をさらう21歳

Hong Kong Boyfriendは、日本で生まれサンフランシスコのベイエリアで育ったというロブ・サンダースのソロプロジェクト。彼は最新シングルを含めまだ3曲しかリリースしていないフレッシュなアーティスト(おそらく日本で紹介されるのはこの記事が初めて)だけれど、彼の魅力はそのたった3曲で充分に伝わってくる。

デビュー曲の『Cold Waters』とそれに続く『Tiramisu』は、一聴しただけで口ずさめるようなキャッチーなポップソングでありながら、何度もくり返し聴きたくなる新鮮な魅力があり、甘いヴォーカルと内省的なリリックはいつまでも心に残る。短く美しい曲の中には短編小説のようなストーリー性があり、Aamir Khullerが監督するMVのクオリティもトップアーティストに引けを取らない。

すでにSpotifyの公式プレイリスト「Fresh Finds」のカバーや、Lyrical Lemonade、Ones to Watchといった目利きの音楽メディアにもピックアップされており、ポピュラーな存在になるのも時間の問題だろう。

『Cold Waters』

『Tiramisu』

Hong Kong Boyfriend──ロブ・サンダースは、物心がついた頃から音楽と共に成長してきた少年だった。自称「オーケストラ・キッズ」だった彼は、子供時代のほとんどをクラシック・ヴァイオリンのトレーニングに費やしていたので、現代的なポップミュージックに興味を持ったのは高校生の頃だったそう。ボン・イヴェールやフランク・オーシャンといったアーティストに惹かれ、自ら曲作りを始めた彼は、大人になるにつれてクラシックミュージックだけでは自分の感情を表現しきれなくなっていく。やがて彼はR&B、フォーク、ヒップホップなどの要素を持つ新しいスタイルを確立し、LAに拠点を移してからは、より音楽に対して“真剣に”なったという。

「よくインターネットで音楽を聴いていたけれど、自分と似たようなミュージシャンはほとんどいなかった。だから、語られていないストーリーがたくさんあるんだ。自分の曲が、アジア系アメリカ人の可能性を広げてくれることを願っている」。

Hong Kong Boyfriendというアーティスト名は、過去に気になっていたけれど“想いが通じ合っていなかった”女性に、文字通り香港のボーイフレンドがいたことを思い出して名付けたのだという。「彼女には香港に遠距離恋愛中の彼氏がいた。僕はそういう人になりたかったんだ」。Hong Kong Boyfriendは彼にとっての憧れであり、なりたい自分──そんなエピソードすら、まるでひとつの曲のようだ。

4月7日にリリースされた新曲「Sharlene」で彼がテーマにしたのは、“愛する人をそばにおいておくこと”。それがとても難しいことだと、彼はわかっている。「僕は幸せに死ねると思う。自分の大切な人たちが、僕が彼らを愛しているってことを知っていてくれたら。でも、なかなか口に出せないこともあるから、この歌を作ったんだ」。

リリースと同時に公開されたMVでは、Hong Kong Boyfriendと彼の愛する友人たちがただ一緒に過ごすことを楽しんでいる、そんな美しい瞬間が記録されている。サマー・シーズンに向かっていくこの季節にぴったりの切ないラブソングだ。

『Sharlene』

映画『ミナリ』でスティーヴン・ ユァンがアジア系アメリカ人として初めてアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされたように、Hong Kong Boyfriendもこれからの音楽シーンを牽引する存在になっていくはずだ。EPやアルバムのリリースも楽しみだけれど、まずはこの3曲をプレイリストに加えて、彼の音楽を楽しんでみてほしい。

Hong Kong Boyfriend『Sharlene』

2021年4月7日リリース

Text:Mayu Sakazaki

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