ピノ・パラディーノ×ブレイク・ミルズ。凄腕ミュージシャンの共作アルバム | Numero TOKYO
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ピノ・パラディーノ×ブレイク・ミルズ。凄腕ミュージシャンの共作アルバム

Photo: Mike Piscitelli
Photo: Mike Piscitelli

最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、Pino Palladino(ピノ・パラディーノ) & Blake Mills(ブレイク・ミルズ)の『Notes With Attachments』をレビュー。

Photo: Mike Piscitelli
Photo: Mike Piscitelli

音に囲まれる快感が味わえる、凄腕ミュージシャンたちの本気の遊び

ライブやフェスに赴く機会がめっきり減って、はや1年ほど。「音に取り囲まれる」といった体験からは、この1年で少し距離ができてしまったかもしれない。そんなコロナ禍2年目の頭というタイミングでリリースされた今作『Notes With Attachments』は、とにかく刺激的なサウンドに囲まれることのできる極上の1枚だ。

今作は、LAのプロデューサー / シンガーソングライターのブレイク・ミルズと、ウェールズ出身のベーシストのピノ・パラディーノによる共作アルバム。前者は、昨年にはフィービー・ブリッジャーズからボブ・ディランのアルバムにまで参加するなど、凄腕ギタリストにして「楽器の音をおもしろく表現する」ことにおいていま最も優れたプロデューサー。後者は80年代から活躍するセッション・ミュージシャンで、ザ・フーやディアンジェロのバンドにも参加、ファンクやジャズを主軸にあらゆるジャンルを弾きこなすレジェンド的プレーヤーだ。そんな二人がタッグを組んだのだから、おもしろくないわけがない。

楽曲はジャズをベースとしたもの。パラディーノがデモとして以前から温めてきたものなのだそうだが、異様に独特なのがその音の鳴り方だ。低音なのに脳天に突き抜けるようなベースの鳴り、空間の様々な場所に自在に現れるギター、背中越しに聴こえてくるシェイカー、まるでドラムの中に入り込んでしまったのではないかとも感じてしまう地鳴りのようなバスドラム……。ひとたび再生すれば、「立体的なサウンド」などという説明が陳腐に思えてしまうほどの異空間が立ち現れる。普通のヘッドフォンでも、5.1chサラウンド環境で聴いているかのような「音に囲まれる」という刺激的な体験を味わうことができるのだ。こうした音づくりは、昨年のソロ作でもそのマジカルな音世界を聴かせてくれていた、ミルズの得意分野だ。

Photo: Jason Tippett
Photo: Jason Tippett

また、超一流な演奏も今作の聴きどころ。パラディーノのベースさばきはただそれを聴いているだけでも悦に入ることができる巧みさだが、さらに、周りの演奏やメロディが変わるたびに同じフレージングでも微妙にノリを変えるなど、百戦錬磨のセッションミュージシャンらしい熟練の技に唸らされる。他にも、メロディやリズム、ノイズの役割まですべて兼ね備えたサックスで楽曲に彩りをもたらすサム・ゲンデル、ブレイク・ビーツのような超テクノ叩きっぷりを披露するクリス・デイヴなどもゲストとして参加。そして、また、ミルズはギターのみならず、ありとあらゆる楽器を弾きこなすマルチぶりを発揮。アフリカやキューバの音楽をイメージした部分があるという今作の楽曲たちだが、耳に面白い響きのいくつもの民俗楽器を弾いているもの彼だ。

Photo: Jason Tippett
Photo: Jason Tippett

とここまで聞くと、なんだか敷居が高いものに感じるかもしれないが、メロディは意外とキャッチーで、エキサイティング。なにより、参加しているミュージシャンたちが演奏の掛け合いを楽しんでいることが目に浮かぶのだ。言ってみれば「凄腕たちの本気の遊び」。生々しい音の刺激が恋しい今の私たちにぴったりな1枚だ。

Pino Palladino & Blake Mills
『Notes With Attachments』
(New Deal Records/Impulse!)

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Text:Nami Igusa  Edit:Chiho Inoue

Profile

井草七海Nami Igusa 東京都出身、ライター。主に音楽関連のコラムやディスクレビュー、ライナーノーツなどの執筆を手がけている。現在は音楽メディア《TURN》にてレギュラーライターおよび編集も担当。

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