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YouTubeから羽ばたいた次世代ミュージシャン、藤井風に注目!

藤井風 『HELP EVER HURT NEVER』
藤井風 『HELP EVER HURT NEVER』

90年代生まれの天才世代から、とんでもないミュージシャンが登場した。5月にデビュー・アルバム『HELP EVER HURT NEVER』をリリースし、あらゆる世代のリスナーから大きな支持を得ている藤井風は、1997年生まれの23歳(アルバム制作時は22歳)。予定されていたメジャー・デビュー・ツアーはコロナ禍で延期となってしまったが、地上波ラジオ等でオンエア中のEPや、インパクトのあるプロモーション・クリップで多くのファンを獲得し、今年一番の大型新人として注目されている。

父親の影響でクラシック・ピアノを3歳から学んでいたという藤井風の「最初期の演奏風景」は彼がローティーンの頃に録画されたYouTubeで今でも見ることができる。天才少年ピアニストは、ほぼ同時に「昭和と平成の歌謡曲」のピアノアレンジもYouTubeにアップしていく。自由なアレンジだが、クラシックの技術に支えられた演奏はハイクオリティで、選曲も多岐にわたる。そこから「ヴォーカルつきヴァージョン」も加わる。デビュー前の膨大なYouTube映像は多くのファンを集め、既にデビュー前から固定リスナーを得ていた。

藤井風の音楽には、膨大な洋楽・J-pop、昭和歌謡曲の影響が感じられる。椎名林檎に平井堅、殿様キングス(!)にエリカ・バドゥ、ジャミロクワイから中森明菜まで、数えきれないほどのインスピレーションが堆積しているが、そのどれをも模倣しているわけではない。結果的には藤井風の統辞法によって、ハイブリッドでありながら超オリジナルな作品が完成している。アルバムの中には、なんとも「昭和」を感じさせる世界観の「死ぬのがいいわ」という曲がある。その昔、駆け落ちに失敗した男女が心中した目黒川には、今でも死体の上に満開の桜が咲くというが…そんな「痴情」と「演歌」のエッセンスが、この上なく洗練された洋楽のタッチで描かれているのだ。23歳の藤井風は、女性から心中を持ちかけられたことがあるのだろうか…などと一瞬考え込んだが、恐らく「昭和歌謡」の世界観から得たもののひとつだろう。原点にあるものが、若さに似つかわしくないのが面白い。

岡山県の小さな町で生まれた彼の歌詞の一人称は「わし」であったり「わたし」であったりするが、PVのメイキング画像では英語でしゃべっている。ローカルから都市を通さずに一気に世界に向かっている感じが、なんとも「最新型」だ。

藤井風 『HELP EVER HURT NEVER』
初回盤 ¥4,000(ユニバーサル)

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Text:Hisae Odashima Edit:Chiho Inoue

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