レトロでドリーミー。ヘイゼル・イングリッシュの『Wake UP!』に夢中! | Numero TOKYO
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レトロでドリーミー。ヘイゼル・イングリッシュの『Wake UP!』に夢中!

最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、Hazel English(ヘイゼル・イングリッシュ)のアルバム『Wake UP!』をレビュー。

60年代の西海岸文化への共感を全身で表現した、レトロ&ドリームポップの決定盤

昨年、クエンティン・タランティーノ監督の映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で60年代後半のアメリカ西海岸の空気にどっぷりと浸った、という人なら、このアルバムにもきっと夢中になるはず。オーストラリア出身で、現在はロサンゼルスを拠点にしているシンガーソングライター、ヘイゼル・イングリッシュのデビュー作『Wake UP!』は、60年代の西海岸の音楽やカルチャーへのオマージュをコンセプトにしたアルバムなのだ。

元々は交換留学でサンフランシスコの対岸、オークランドを訪れそのまま住み着くようになった彼女。2017年にリリースした初のEPでは、そんなサンフランシスコやオークランドの霧(夏のサンフランシスコは霧が出やすい)と太陽の光を思い浮かべるような、ノスタルジックで甘酸っぱく、どこかほろ苦いメロディのドリームポップを生み出し、胸をいっぱいにさせられた。対して正式なデビューアルバムとなる今作は、同じくレトロな印象ではあるのだが、彼女自身がLAに移住したということも影響してか、60年代の西海岸から聴こえてくるような音楽をテーマに的を絞ったサウンドやアレンジに仕上がっているのが面白い。得意のリバーブのたっぷりかかったサウンドは、夢見心地とサイケデリアを行き来。1曲目の「Born Like」での気だるげなリズムやヴォーカルとも相まったケレン味は、どこかカルト的でもある。さらに、グルーヴィーなバンドを従えた広がりを感じるサウンドには、まるでザ・ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』のようにさえ聴こえてくる瞬間もある。

また、やはり60年代風にこだわったビジュアルも必見だ。これまでもヴィンテージ・ファッションをトレードマークにしていたヘイゼルだが、「Shaking」のMVでは極彩色のミニスカートとビーハイブヘアでヒッピー集団を幻惑。まさに映画『ワンス~』の一場面のようでもあるのだが、こうした時代の自由な若者文化ををコンセプトに明確に据えたのは、情報社会や資本主義に囚われず自分の中の本当の声に目を覚ますべきだ(=“Wake Up”)という想いからなのだとか。古き良きおおらかな時代への共感を、持ち前の夢見心地なサウンドに溶け込ませた、他にはないレトロでドリーミーな世界観。気づくと、何度も再生ボタンに手が伸びてしまっている。


Hazel English『Wake UP!』
2020年4月24日リリース(P-VINE)

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Text:Nami Igusa  Edit:Chiho Inoue

Profile

井草七海Nami Igusa 東京都出身、ライター。主に音楽関連のコラムやディスクレビュー、ライナーノーツなどの執筆を手がけている。現在は音楽メディア《TURN》にてレギュラーライターおよび編集も担当。

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