キャリア最高傑作!U.S. Girls渾身のニューアルバム | Numero TOKYO
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キャリア最高傑作!U.S. Girlsのニューアルバム

最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、U.S. Girlsの『Heavy Light』をレビュー。

多国籍な音楽と批評眼を内包した、アメリカの写し鏡

U.S. Girlsは、アメリカ出身で現在はトロントを拠点にしている、メグ・レミーによるソロ・ユニット。キャリアはすでに10年を超えているが、脂が乗っているのはまさに今、といっても過言ではない。先ごろリリースされたニューアルバムでは、ちょっぴりダークなダンス・ポップと、多国籍なアレンジが混ざりあった、聴けば聴くほどハマり込みそうな、独特な世界観を完成させている。 そもそも、キャリアの初期は、レーベルメイトでもあるグライムスにも通じるような、キッチュなシンセ・ポップ・アーティストという印象が強かった彼女。だが、2年前の前作アルバム『In a Poem Unlimited』のラスト曲である「Time」は、まるでアフリカン・リズムをロックに取り込んだ80年代のバンド、トーキング・ヘッズの楽曲のようだったので驚いた記憶がある。そして今作は、そのアイデアをさらにカラフルに膨らませたような仕上がりだ。前作と比較するならば、今作はポール・サイモンの『Graceland』を現代風にしたようなアルバム、と言えば良いだろうか。全編を通してフィーチャーされているコーラスにはソウルの血が色濃く流れつつ、アレンジにはアフリカンなリズムはもちろん、サンバやボサノバ、さらには、スペイン語混じりの「And Yet It Moves / Y Se Mueve」に聴けるように、サルサのエッセンスまでも組み込まれている。そんな多種多様な民族の音楽をブレンドし、ディスコ・ライクなテンポで躍らせてしまう今作は、まるで今のアメリカの写し鏡だ。

その証拠、と言っては何だが、1曲目を飾る「4 American Dollars」は、キャンディ・ポップ風のメロディにコンガの鳴り響く楽しげなムードの楽曲でありながら、拝金主義や資本主義へ疑念を向けるリリックが鮮烈だ。他にも男性社会を皮肉るリリックがあったりと、今作には自身の育った「アメリカ」に対する鋭いまなざしが内包されている。その意味でもやはり、ステージ・ネームにぴったりハマる彼女のキャリア最高傑作と言えるだろう。

U.S. Girls『Heavy Light』(4AD)
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Text:Nami Igusa  Edit:Chiho Inoue

Profile

井草七海Nami Igusa 東京都出身、ライター。主に音楽関連のコラムやディスクレビュー、ライナーノーツなどの執筆を手がけている。現在は音楽メディア《TURN》にてレギュラーライターおよび編集も担当。

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