抜群のセンスを誇る20歳のポップアイコン、Clairoのファースト・アルバム
最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、Clairoの『Immunity』をレビュー。
20歳のソングライターによる、端正さと手作り感が絶妙な箱庭ポップス
“ベッド・ルーム・ポップ”と聞いてどんな音楽を思い浮かべるだろうか? 夢見心地でローファイなサウンド……概ねそんなイメージを抱く人が多いはずだ。ボストン出身のClairo(クライロ)も、そんな宅録のベッド・ルーム・ポップ・アーティストとしてバイラル的に注目されていた存在……だった、ついこの間までは。というのも、この度リリースされたファースト・アルバム『Immunity』は、DIY感を残しながらも単なる“ベッド・ルーム”の域を超えた、優れたポップ・アルバムに仕上がっていたからだ。
もともとは「Pretty Girl」(2017年)という手作り感たっぷりの楽曲とMVで話題となった彼女だが、今作は元ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタム・バトマングリとの共同プロデュースという形で制作されている。そのロスタムらしい、クラシカルなアレンジ(「Impossible」にはヴァンパイア・ウィークエンドの「Step」のハープシコードのフレーズを思わせるリフが登場!)や多彩なリズム・セクションのサウンド・メイクが耳に面白く、それらがClairoの非凡なメロディ・センスを際立たせてもいるのが今作のキモと言えるだろう。
また、甘美なヴォーカルはこれまで以上にクリアに前面に押し出され、丹念に作り込まれたトラックによく馴染んでいるものの、サウンド全体は柔らかくコンパクト。まるで丁寧に手入れをされた箱庭のように、端正な美しさと可愛らしさがなんとも絶妙なバランス感で同居しているのだ。そんな彼女は、まだ弱冠20歳とのこと。この先のシンガー/トラックメイカーとしての進化から目が離せない。
Text:Nami Igusa Edit:Chiho Inoue