加賀・山中温泉の渓谷に佇む旅館「花紫」でアートと温泉と食に浸る | Numero TOKYO
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加賀・山中温泉の渓谷に佇む旅館「花紫」でアートと温泉と食に浸る

石川県加賀市にある創業120年を超える旅館「花紫」に新たにアートスイートがオープンしました。

最寄りである加賀温泉駅までは東京から新幹線で約3時間。今年3月に北陸新幹線が石川県内全線に開業したことで、乗り換えなしで行けるようになりました。花紫で過ごした1泊2日のウェルネスな体験をレポートします。

加賀温泉駅から送迎バスに乗って20分ほどすると、渓谷に佇む花紫が見えてきました。写真の奥には俳人・松尾芭蕉が「行脚の楽しみここにあり」と絶賛したといわれる黒谷橋も見えます。

エントランスには、花紫オリジナルのクロモジと白檀を合わせたお香の香りが広がり、すっきりとした爽やかな香りに癒やされました。正面にある栃の一枚板で制作された造形家の田中瑛子氏によるアートも圧巻です。

チェックイン時にウェルカムドリンクとして菊花と煎茶を合わせたブレンドティーをいただきました。私が訪れたのは旧暦の重陽の節句にあたる時期。かつて菊花には邪気を払う力があると信じられており、この時期に不老長寿を願って菊酒を飲む習わしがあったそうです。こうした日本の古き文化に触れるおもてなしも120年を超える歴史を持つ花紫ならではです。

北陸随一の絶景を独り占めするスイートルーム

私が宿泊したのは花紫に1部屋しかない、142平米の広々としたアートスイート「夏の五」。玄関を入ると、植物を用いたガラスアートがお出迎え。ガラス作家の佐々木類氏とオーナーによる共作で、石川県内で採取した植物が使われているそうです。日が落ちると、ガラスの冷たさが引き立ち、また違った表情を見せます。


中に入ると、リビングと寝室がひと続きになった開放的な空間が広がります。北陸随一とも言われる大聖寺川の美しい渓谷を独り占めする壁一面のガラス張りからほんのりと紅葉の色づきを見つけました。どのシーズンに来ても、ここから眺める四季折々の自然の美しさに心を奪われるはずです。

(左)自然由来にこだわる化粧品メーカー・ルバンシュのスキンケアセット
(右)注目のクラフトドリンク、金沢百万石ビールと奥能登地サイダー

宿泊先のアメニティは楽しみの一つ。石川県内の企業が手がける商品が揃っていました。

山中温泉に来たならば北陸屈指の名湯は見逃せません! 花紫には最上階にある露天風呂と大浴場の2つの湯場があるのですが、スイートルームには室内にも露天風呂がついています。心地よい風にあたりながらひと目を気にせず入るお風呂は別格。さらにサウナと水風呂も完備しており、開放的でありながらプライベートな空間で極上の整いを体験しました。

旬の味覚をアラカルト懐石で自由に味わう

ロビーにある茶房ではカウンター席の目の前でお茶を入れてくれます。さまざまな茶葉を取り揃えており、事前予約制でアフタヌーンティーも行っています。

私は、富山県朝日町で古くから親しまれているという伝統的な「バタバタ茶」をいただきました。麹カビで発酵させた黒茶を使い、最後の一滴まで丁寧に入れると、塩をつけた茶せんで泡立てて完成。わずかな塩味が甘さを引き立てるまろやかな味わいでした。

夕食は、季節ごとに異なるメニューから自由に選べるアラカルト懐石。料理長による日本酒のペアリングが楽しめるというおまかせコース(9品)にしました。時間を気にせず、心ゆくままに食事を楽しんでいたら、あっという間に3時間が経っていました。

(左)口の中でいくらが弾けて無花果に濃厚に絡みあう!(右)わかめにも見える金時草はしゃくしゃくとした食感

開放的な露天風呂で心と体をほぐし、旬の味覚が織りなすコース料理でお腹を満たした翌日は、普段よりもすっきりとした目覚めで気持ちのいい朝を迎えられました。

朝食には炊き立てのご飯にお味噌汁、七輪で焼く干物、だし巻き卵……と、理想の朝ごはんが並びます。石川県特別栽培米こしひかりを土鍋で炊いたご飯は一粒一粒がしっかりしていて、ほどけるような食感。朝は食欲がないのですが、この日はあまりのご飯のおいしさにおかわりまでしてしまいました。

食や温泉に浸るひと時を通して、普段の生活では食べながら、聞きながらのながら行動が当たり前になっていたことに気づきました。食やアート、ただ一つのものに意識を向けることで、鈍くなっていた五感も取り戻せるはず。「花紫」で心と体にじっくり向き合うひと時を過ごしてみてはいかがでしょうか。

山中温泉 花紫
住所/石川県加賀市山中温泉東町1丁目ホ17-1
TEL/0761-78-0077
Instagram/@hanamurasaki_official
URL/https://www.hana-mura.com/

Profile

門田実夢Miyu Kadota ジュニア・エディター。高知県出身。2020年に扶桑社に入社し、営業・PRを経て24年に『Numero TOKYO』編集部に異動。かわいいものが大好きなミーハー、そしてフェミニスト。韓国ドラマ好きが高じて、ハングルを勉強中。ようやく立てたスタートラインから、一人前目指して今日も奮闘!

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