息をのむ美しさ! 染織界二大巨匠のコラボレーションで生まれた“着るアート”
着物を着る機会は少ないですが、織物、染物について見知りすることは楽しいもの。銀座もとじで開催されている「二大巨匠展 競演する織と染 ― 北村武資と森口邦彦」で、人間国宝同士のかつてない合作が展示されると聞き見に行って来ました。
銀座もとじは1979年に創業。「新しい時代の新しい着物店」を掲げ、着物の魅力を発信し続けています。今回の合作も、銀座もとじがきっかけとなり実現したそう。二代目の泉二啓太さんに展示について聞きました。
「今回は人間国宝のお二人、北村武資先生と森口邦彦先生がお互いの技術を駆使し、二人で1作品を制作するという、着物界でかつてない試みが実現しました。北村先生は織りの2つの技法『羅(ら)』と『経錦(たてにしき)』で重要無形文化財保持者(人間国宝)になられ、森口先生は染の技法『友禅』で 重要無形文化財保持者になられた方です。もともと北村先生と銀座もとじとは20年以上のお付き合いがあり、北村先生の紹介で2019年に森口先生の作品展を開催し、大好評だったその作品展がきっかけとなり、二人展の提案をしたところ、先生たちの方から、北村先生が『経錦』で織り上げた生地に森口先生が『友禅』で染め上げるという合作の提案をいただいたんです。試作や試験を重ね、無二の作品が出来上がりました」
森口邦彦氏の作品で広く知られているのは三越のショッピングバッグのデザイン。染色家がグラフィックデザイン?と思われるかもしれないですが、美大で日本画を学ばれた後に渡仏。パリ国立高等装飾美術学校でグラフィックデザインを学び、帰国してから「友禅」の重要無形 文化財保持者(人間国宝)であった父・森口華弘氏の下で友禅技法を学び始めたと言う経歴の持ち主。それまでの友禅とは一線を画すグラフィカルなデザインで注目されます。三越のショッピングバッグは森口氏が手掛けた友禅訪問着のデザインを起用したもの。 2007年に「友禅」で重要無形文化財保持者(=人間国宝)に認定され、2021年にフランス共和国 レジオン・ドヌール・コマンドゥール章受賞。メトロポリタン美術館をはじめとする世界の主要博物館が所蔵されるなど、海外でも高く評価されています。
北村武資氏は15歳から西陣で織物を学び独立。その技術力と芸術性の高さで数々の賞を受賞。古代に発展し途絶えた織り技法を独学で復元し、1995年に「羅」、2000年に「経錦」で重要無形文化財保持者(=人間国宝)に認定。技術者で芸術家でもある北村氏の頭の中がどうなっているのかもはや理解の範疇を超えています。
異なる環境から織・染の道に入った両氏が出会い、尊敬の念を持って長年交流されているそう。今回の至高の一点はその信頼関係の賜物。
「先生の作品はそれぞれ京都国立近代美術館やヴィクトリア&アルバート博物館をはじめ国内外の美術館に収蔵されていますが、今回の作品は、店舗での展示のため至近距離で鑑賞できます。一本一本の糸が織り成す生地の奥行き、繊細な染めの至高の技術、光のあたり方による表情の違いを間近で感じていただければ。他にお二人の作品も多数展示しています」と泉二啓太さん。
森口氏自身も「単にコラボレーションといっても、コラボレーションの在り方そのものがクリエイティブでなかったら、意味がないと思うんです。今回そう言う意味では、ひとつひとつのコラボレーションが心を込めた違った在り方やったんで、お客さんに見てもらって二人展らしいなと言う提案ができたと思う」と取材動画で語られています。
日本が誇れる才能の融合、「着物、染織」という枠組みを超えた最高峰の工芸品は本当に素晴らしく、ずっと眺めていたくなりました。
「二大巨匠展 競演する織と染 ー 北村武資と森口邦彦」
会場/銀座もとじ 和織・和染
住所/東京都中央区銀座4-8-12
会期/2022年2月19日(土)~27日(日)
営業時間/11:00~19:00
URL/www.motoji.co.jp/
※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認