Food / Editor's Post

石川県小松市発、杜氏 農口尚彦×一流シェフによる美食イベント始動

日本最高峰の杜氏のひとり、農口尚彦が率いる酒蔵、農口尚彦研究所が、石川県小松市の地元食生産者とともに、「美食のまち」として小松の魅力を発信するため、著名シェフによる酒と料理のペアリングイベント「小松Saketronomy(サケトロノミー)」を開催。2019年3月25日に、フランス料理世界大会ボキューズドール2019の日本代表の高山英紀シェフを招いて行われた、イベントの模様をレポートする。

「酒づくりの神様」と称される、日本最高峰の醸造家のひとり、杜氏・農口尚彦の匠の技術・精神・生き様を研究し、次世代に継承するため、石川県小松市に2017年11月に誕生した酒蔵、農口尚彦研究所。同研究所と有機米生産者「護国寺農場」、有機野菜生産者「西田農園」がタッグを組んで、小松市の地元農産物や食に関わるクリエイターの発信拠点を作り、美食のまちとしての魅力を発信すべく、新たな食イベントを立ち上げた。

(左)杜氏 農口尚彦(右)「メゾン・ド・タカ芦屋」高山英紀シェフ
(左)杜氏 農口尚彦(右)「メゾン・ド・タカ芦屋」高山英紀シェフ

それが、酒(Sake)とガストロノミー(Gastronomy)の融合をコンセプトに、国内外の一流シェフとコラボレーションする食イベント「小松Saketronomy(サケトロノミー)」。2019年3月に行われた、記念すべき第1回目は、フランス料理世界大会ボキューズドール2019の日本代表である、「メゾン・ド・タカ芦屋」の高山英紀シェフを招き、小松市松東地区を中心とした地元農産品を用いたガストロノミーのペアリングを提案。農口尚彦研究所のテイスティングルーム杜庵にて行われたイベントをひと足お先に体験してきました。


イベント開始前に、農口尚彦研究所から徒歩数分の所にある、メニューにも使われるオーガニック野菜を提供する、有機JAS認証野菜栽培の「西田農園」を見学。特に、ルッコラ、わさび菜など葉物を中心にサラダ野菜を多く生産し、その素材本来の美味しさは、生で食べたくなる野菜として評判が高い。

会場は、農口尚彦研究所のテイスティングルーム「杜庵」
会場は、農口尚彦研究所のテイスティングルーム「杜庵」

全7品の地元食材を生かしたフレンチ料理に、それぞれ農口さんの作る日本酒を合わせていただくという贅沢な内容。お猪口も、九谷焼や珠洲焼、能登島ガラスなど、石川県の工芸品を中心に使用し、見た目も華やかにお酒の味を引き立ててくれる。

料理とお酒のマリアージュの一品目は、「純米酒で煮出した蛤のブイヨン セロリと柚子の香り」。「蛤は酒蒸しが一番美味しい」と語る高山シェフが日本酒だけでうまみを表現したあっさりお出汁の優しいお味。合わせたお酒は、酒米、五百万石100%使用した初年度産のビンテージ古酒「純米酒 無濾過生原酒2017」。初年度は県内のみの流通だった上に、火入れをしていない生はこの酒蔵でしか扱っていないというレア中のレア。ふくよかな甘みが特徴。


お次は、旬の春キャベツなど10種の野菜をなんと23層に重ねたという、気の遠くなるような繊細かつ緻密な美しい一皿「小松産野菜と有機農場のお米 ミルクレープ」。セルフィーユや生姜のフレーバーと酢飯の酸味に相性抜群の「YAMAHAI MIYAMANISHIKI 無濾過生原酒 2018」は、飲んだそばからキレていくしっかりした口当たり。


王道フレンチ的なアプローチの「サフラン風味のビスクドオマール」。オマールの味わいと濃厚なクリームソースのベースにコニャックの余韻を感じさせる一品には、「山廃純米酒 2017」を14℃に合わせることで、両方が伸びるような深みを引き出してくれる。

続いて、3〜4時間かけてゆっくり蒸した鮑のうまみと、ほんのり甘い茄子、山菜の爽やかな苦味のハーモニーが絶妙な「鮑と筍のガレット仕立て 茄子のコンフィ 木の芽風味」には、「YAMAHAI GOHYAKUMANGOKU 無濾過生原酒 2018」を42℃のぬる燗で。

そして、高山シェフの十八番!フランス料理世界大会ボキューズドール2019の本戦で出された「4種の貝と野菜を使った温かいシャルトリューズ ソースブールブラン」を、まずはホールで、アーティスティックな見た目の美しさを鑑賞。色違いの人参を用い、折り紙ような側面とグラデーションを表現したのだそう。


切り分けた状態も、同じく人参を用いたグラフィックな切り口にまず衝撃。味はというと、ムール貝、アサリ、帆立、牡蠣の4種の貝をベースに、カリフラワーとレモングラスを効かせたシチューのムース。そこに、牡蠣のうまみたっぷりの濃厚なソースをたっぷり添えて。ペアリングには、ワインだったらシャルドネを合わせるというだけに、「純米大吟醸 無濾過生原酒 2017」をワイングラスでいただく。


平安時代から室町時代にかけて能登半島で作られていたという珠洲焼のボトルに入れた仕込み水もまた美味。

最後のメインディッシュは「赤味噌香る黒毛和牛ロース肉のグリエ 旬の野菜と共に」。赤味噌に漬け込んだサーロインの程よい塩っ気と甘みが、「HONJOZO 無濾過生原酒 2018」と相性ぴったり。

シメのデザートは、甘さ控えめで大人もペロリと後味さっぱりといただける「香り高い酒粕のクリームと爽やかな酸味の苺 スミレのテュイル ココナッツのグラスを添えて」。キャラメルソースのビターな甘みとベリーソースの甘酸っぱさでアクセントをプラス。

農口尚彦研究所で、匠の酒づくりの歴史を学び酒蔵を見学したり、農園を訪問したり、作り手の顔が見え、そのこだわりに触れながら、いただくお料理やお酒はまた格別。

今後は、春夏秋冬と年4回の季節ごとに、国内外の一流シェフを招聘して開催していく。シェフによって、料理によって、変わってくる食材と日本酒の使い方や組み合わせも楽しみです。

こうした活動を通じて、石川県産の食材の存在を広めると共に、食文化の魅力を引き出し、小松市が世界中の美食家たちの旅の目的地になることを目指しているのだという。

農口尚彦研究所

住所/石川県小松市観音下町ワ1番地1
URL/https://noguchi-naohiko.co.jp/

Photos:Kyoko Kataoka  Text:Masumi Sasaki

Profile

佐々木真純Masumi Sasaki フィーチャー・ディレクター/ウェブ・コンテンツディレクター。大学在学中から編集プロダクションにて雑誌などに携わる。『流行通信』編集部に在籍した後、創刊メンバーとして『Numero TOKYO』に参加。ファッション、アート、音楽、映画、サブカルなど幅広いコンテンツを手がける何でも屋。操上和美が撮影する「男の利き手」や「東信のフラワーアート」の担当編集。ここ数年の趣味は山登りで、得意芸の“カラオケ”は編集部名物。自宅エクササイズ器具に目がない(なんならコレクター)。

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