パリで活躍する日本人ピアニスト中野公揮をご存知ですか? | Numero TOKYO
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パリで活躍する日本人ピアニスト中野公揮をご存知ですか?

ピアニストで作曲家の中野公揮さんとチェリストのヴァンサン・セガール(Vincent Segal)のショーケースライブに行ってきました。しかもステージのアートディレクションを手がけたのは、なんと彫刻家の名和晃平さん。そんなパリを拠点に活動する、若き日本人音楽家をご紹介します!

少し前になりますが、青山のスパイラルホールで二日間限定で開催された、パリで活躍する日本人ピアニストで作曲家の中野公揮さんのライブに行ってきました。実は彼、小誌で以前連載をしてくれていた俳優の中野裕太さんの弟。当時彼の連載を担当していたご縁で、東京芸大で学んでいた公揮さんにも何度かお会いしたり、演奏を聞きに行ったことがあります。その公揮さん、今は、活動拠点をパリに移し、ルーブル美術館、シャトレ座をはじめ、ヨーロッパを中心に演奏をしている、まさにアップカミングなアーティストです。

今回は、チェリスト、ヴァンサン・セガール(Vincent Segal)とのデュオでの日本初上陸の招待制ショーケースライブ。ピアノとチェロというクラッシクなコンサートかと思いきや、もちろん王道な楽器を用いたクラシック音楽の要素がベースにはあるものの、公揮さんの中にある、他ジャンルのモチーフをコラージュしながら楽器の技巧性を用いたプログラムだそう。

現代音楽家の多くは、クラシック音楽をルーツに持ちながらも独創的に進化変容させているけれど、実験的過ぎてわかる人にわかればいい的な難解なことも多々あり。でも彼らの音楽は、そうではなく、誰もが受け入れられる音だけど、かといって決して明るくもない。スリリングな展開が待ち受けているかのような、音のドラマに思わず引き込まれます。

なんだかジェットコースターに乗っている時の込み上げてくる高揚感と背筋にぶるっと寒気が走るようなゾクゾクと鬼気迫る演奏でした。個人的にピアノ音楽は好きだし、スティーブ・ライヒ、フィリップ・グラス、テリー・ライリーのような鍵盤を感じさせるミニマルな現代音楽が好きなので、彼のこれからの表現世界に興味津々です。

また、ステージの舞台美術も素晴らしく、このアートインスタレーションを手がけたのは、彫刻家の名和晃平さん(ちょうど発売中の「ヌメロ・トウキョウ」2018年9月号のインタビュー連載「男の利き手」にご登場いただいています)。銀河、夜空のようなキラキラと煌めくミッドナイトブルーの静かな光に包まれた空間に、アイコニックな真っ黒の彫刻が配され、まるで広い宇宙のどこか惑星で演奏しているかのようでした。途中星屑が舞うかのような幻想的な演出も美しかったです。音楽とアートの調和も、生演奏だとさらに感動的。

そんな公揮さんの、ヴァンサン・セガールと共演するデビューアルバム『LIFT』も必聴。鬼才ピアニスト、チリー・ゴンザレスの名盤『SOLO PIANO』のパート1と同じ仏レーベル「No Format!」からリリースされているのもポイントです。まずはアルバムを聞いてみてください。

koki
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Koki Nakano & Vincent Segal『LIFT』

Profile

佐々木真純Masumi Sasaki フィーチャー・ディレクター/ウェブ・コンテンツディレクター。大学在学中から編集プロダクションにて雑誌などに携わる。『流行通信』編集部に在籍した後、創刊メンバーとして『Numero TOKYO』に参加。ファッション、アート、音楽、映画、サブカルなど幅広いコンテンツを手がける何でも屋。操上和美が撮影する「男の利き手」や「東信のフラワーアート」の担当編集。ここ数年の趣味は山登りで、得意芸の“カラオケ”は編集部名物。自宅エクササイズ器具に目がない(なんならコレクター)。

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