1話完結で笑いあり涙あり気づきあり。 Netflixドキュメンタリーにハマり中! | Numero TOKYO
Culture / Editor's Post

1話完結で笑いあり涙あり気づきあり。 Netflixドキュメンタリーにハマり中!

ドキュメンタリーってなんだか退屈で、苦手…。でもNetflixの『クィア・アイ』シリーズを見てから一変。スピードのある展開で決して退屈させないし、価値観を広げてくれる気づきがたくさん。1話完結だから、ひとりランチのお供にサクッと楽しめるのも重要なポイント。私の最近のお気に入りは『ネクスト・イン・ファッション』と『100人の回答』です。

次世代のファッション界を担うデザイナーはだれ? 『ネクスト・イン・ファッション』

2020年1月に公開された、ファッション・デザイナーのコンペティション番組『ネクスト・イン・ファッション』。無名のデザイナー18名が、ファッションECサイト「ネッタポルテ(Net-A-Porter)」からの賞金25万ドル(約2,700万円)とコレクションを展開できる権利、そして何より「ネクスト・イン・ファッション(次世代のファッション界の担い手)」の名声を得るために戦います。MCを務めるのは我らがファッションアイコン、アレクサ・チャンと『クィア・アイ』シリーズのファッション担当、タン・フランス。 デザイナーたちは各エピソードごとにレッドカーペット用のドレス、ストリートウェア、スーツなどのテーマが与えられ、それについてのルック1〜2体をわずか2日のうちに自らの手でデザインし、縫製し、ランウェイで発表しなければなりません。(最終回はなんと10ルックを3日間で!)タイトなスケジュールの中でひらめき力、技術力、判断力、コンセプトの強さ、メンタリティが試されていきます。途中で少しでもコンセプトに迷いがでたり、イライラし始めたりする人は、即脱落。驚くほど作品にあらわれてしまうからです。

毎エピソードごとにプロの目で厳正な審査が行われ、勝者と脱落者が選ばれます。審査を務めるのはMCのアレクサとタン、そしてトミー・ヒルフィガーやフィリップ・リムなど各回ごとの大物ゲストたち。真剣に向き合うあまり、ほかの審査員と意見が合わず、途中で会場を出ていってしまうなんて人も。みんな真剣です。ファッション界で生き抜いてきた彼らだからこその、深いアドバイスや心からの賞賛に胸が熱くなります。

特筆すべきは韓国のキム・ミンジュ(@_minjukim_)と中国のエンジェル・チェン(@angelchenwig)の活躍。欧米勢の固定概念を打ち破るような発想、色使いは圧巻です。

デザイナーの試行錯誤の過程はもちろん、彼らが互いにライバルなのにも関わらず、アドバイスし合い、良き仲間となっていく様子はヒューマンドラマとしても面白かったです。すでに優勝者の商品はネッタポルテで発売中なので、こちらもあわせてチェックを!

『ネクスト・イン・ファッション』
Netflixオリジナルシリーズ『ネクスト・イン・ファッション』独占配信中
www.netflix.com/title/81026300

無意識の偏見に気づかされる! 科学番組『100人の回答』

「ハロー、ワンハンドレッド ヒューマンズ!」のあいさつで始まる『100人の回答』は、年齢も生い立ちもさまざまの100人の被験者(ヒューマン)を実験台に、人間の行動を解き明かすドキュメンタリー番組。ホストを務めるのはコメディアンで数学の学位を持つザイナブ・ジョンソンとサミー・オベイド、女優で科学ジャーナリストのアリー・ワードの3人。「男と女、優秀なのは?」「拷問と賞賛、生産性を上げるのに必要なのはどちら?」「ルックスは刑期に影響するの?」などなど、気になる疑問が次々と明らかに。

特に興味深かったのは、エピソード4「偏見の塊?」の恋愛にバイアスはあるかという実験。ヒューマンたちの目の前に6名の男女が登場。彼らをカップルにしてみて、というお題がくだされる。が、実はすでに6名の男女は本当のカップル。ヒューマンたちは、本当の組み合わせを当てることができるのだろうか? 

…結果、正解したのは100人中たったの1人のみ! 組み合わせはたった15通りしかないのに、なぜ99人は間違ってしまったのでしょう。それは、正解の組み合わせが(男、男)(女、女)(男、女)だったから。99人は、無意識的にすべてヘテロの組み合わせ(男、女)のみにしてしまっていたのです。アメリカの3分の2、そしてこの100人のヒューマンのうち90人が同性結婚を支持してるにも関わらず、自身がクィアな人でさえも、です。そしてお恥ずかしながら私も…。

実験からわかるのは、私たちがいかに無意識バイアスに支配されているかということ。生まれ育った環境や社会通念によって、意図せずとも私たちはすでに「偏見の塊」なのです。私たちは意識的にバイアスを排除しなければフラットではいられない、ということを痛感しました。

最後にヒューマン#76は言います、「みんながこんな経験をできたらいいのにね。年齢も環境も人種も文化も違う人間が一同にるつぼの状態を」。#07は「みんなが仲いいのに驚く。誰もが親切。普段出会わないような人たちとの会話が楽しい」。「尊重しあい、新しい経験ができて、人生が変わった」と#41。

私たちは確かに偏見の塊だけれど、同時にそれは新たな経験や知識によって変えることができるのだなと、とても救われた気持ちになりました。1エピソード30分前後なので、スキマ時間にぜひ見てみてください。

『100人の回答』
Netflixオリジナルシリーズ『100人の回答』独占配信中
www.netflix.com/title/80215997

いかがでしたか? 私は次に大好きな『クィア・アイ』の新シーズンを見る予定です。早くファブ5に会いたい! 

Profile

金原毬子Mariko Kimbara エディター。学生時代にファッション誌編集部でのインターンや雑誌制作を経験し、編集者を志す。2017年扶桑社に入社し営業職を経て、19年『Numéro TOKYO』編集部に異動。主に人物取材やカルチャー、ライフスタイルなどの特集、本誌の新連載「開けチャクラ! バービーのモヤモヤ相談室」などを担当。音楽、ラジオ、ポッドキャストが好きで片時もヘッドフォンが手放せない。

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