みなさん、金原ひとみさんの最新作『YABUNONAKAーヤブノナカー』は読まれましたか? 私は息つく暇もなく一気に読んでしまいました。ページをめくるのももどかしく感じるほど面白かったです。嬉しいことに取材が叶い、現在発売中の本誌6月号では4ページにわたり金原ひとみさんのポートレートとインタビューを掲載しています!!

『YABUNONAKAーヤブノナカー』はある性的搾取の告発を巡り、時代の変化に取り残され、溺れもがく人々を描いた小説です。この小説のすごいのは、さまざまな年齢、性別、立場の8人の視点で物語が紡がれ、その誰もが解像度高く描かれているため、一人一人に共感してしまう点です。
インタビューでは金原さんに「いまは割と全面的にどんな人でも受けれたいし理解したい。その気持ちが『YABUNONAKA』でこんなにキャラクター数を作って、それぞれの一人称で書いてみようと思った要因の一つです」というお言葉をいただいたのですが、この作品からはそんな、金原さんの社会を見つめる厳しくもやさしい眼差しを感じました。

私がNumero TOKYO編集部に異動してから6年、特集担当として、主に女性たちのパワーになるようなコンテンツを作れたらと試行錯誤してきました。フェミニズムを勉強したり、さまざまな作品に触れるなかで「過去のあの体験は女性性を搾取されていたのかも」「ヘラヘラ受け入れてしまったこともあったな」「困っている子がいたのに助けられなかった」と思い返すことも増え、性加害のニュースに敏感になり、身近な人の不用意な発言に傷つき、性加害を告発した女性が貶められるような言葉に怒り、「許せない」と思うことが増えました。そんな私にとって登場人物の一人、長岡友梨奈は最も共感できる存在でした。
でも一方で、加害者である木戸や五松にも少なからず共感してしまったし、友梨奈の正義感にも禍々しいものを感じたし、中立的な一哉やその他の登場人物にも危うさを見たのです。加害者を擁護する、とかではなく、この小説を読んで、めまぐるしい時代の変化の中で確実に取り残されてしまう人はいて、それはいつかの自分でもあるかもしれなくて、怒りに囚われてばかりではなく、もっとさまざまな人々と共存して生きていくにはどうすればいいのか、自分が変化に柔軟になるにはどうしたらいいかを真摯に考え続けなくてはいけない、と思いました。
インタビューでは金原さんがなぜこのテーマを扱おうと思ったのか、時代に取り残されず柔軟に生きる方法、未来に期待することなどを伺っています。ぜひ『YABUNONAKAーヤブノナカー』と併せて読んでいただけたら嬉しいです。

金原さんのポートレートは鈴木親さんに撮り下ろしていただきました! 90年代後半からファッションフォトの最前線で活躍しながら、さまざまなカルチャーにも造詣が深く、作家や映画監督などの撮影も多数手がけている鈴木さん。実は金原さんが本誌に初登場した2008年10月号で、『蛇にピアス』の映画化を手がけた蜷川幸雄監督と対談した際にも撮影してくれていました。スタイリングを手がけたのは、統括編集長の田中杏子。鮮烈なイエローの、ボッテガ・ヴェネタのドレスは金原さんの知性と美しさを引き立ててくれ、メモリアルなポートレートになりました。ちなみにインタビューを担当してくれたのはこの2008年の対談も、昨年の朝吹さん、金原さん、鳥飼さんの鼎談も、今回のインタビューも林みきさん! いつもながら丁寧な読み込みに頭が下がります。
さらに、金原ひとみファン(私)にとってたまらない「金原ひとみを構成するもの」コーナーも! 金原さんが影響を受けた小説とは? 金原さんの小説にはライブがたくさん登場するけど、どんな音楽を聞いてるんだろう? どんな映画がお好きなんだろう……。さらにはお気に入りのファッションアイテムやハマっているお酒についても伺いました。私は早速、金原ひとみさんが影響を受けたという『眼球譚』をウキウキで手に入れて、電車の中で読み始め、慌てて閉じました。電車の中で読む本じゃなかった! GW中に家で読みたいと思います(笑)。
6月号をAmazonで購入する



