「女性とは何か?」IWAKAN編集部の「女声展」で考えたこと【#私の土曜日16:00】 | Numero TOKYO
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「女性とは何か?」IWAKAN編集部の「女声展」で考えたこと【#私の土曜日16:00】

クリエイティブスタジオREINGが手がける雑誌『IWAKAN』編集部が、3月8日の国際女性デーにあたり新宿のギャラリー「gallery -1」で開催した『女声』展に行ってきました。 雑誌『IWAKAN』は「世の中の当たり前に違和感を問いかける」をテーマに、ジェンダーや性別の当たり前に違和感を投じてきました。いつも私に新しい疑問を持つきっかけをくれ、視野を広げてくれる存在です。 そんな『IWAKAN』編集部が国際女性デーに合わせ、女性について考える展示会を企画していると聞き、お邪魔してきました。いつも大胆なヴィジュアルでハッとさせてくれる『IWAKAN』ですが、今回はヴィジュアル無しで声だけとのこと。どんな展示なんだろう、どきどき。

今回の展覧会のコンセプトは「女性とは何か?」です。男女二元論やジェンダーのカテゴリとして当たり前のように使われている“女性”ですが、それは何をもって定義されるのだろうか、と。

そこでまず、現在日本では「女性」についてどう定義されているのか、会場である地下のギャラリーに続く階段には、さまざまな辞書ごとの「女性」の定義がびっしり展示されていました。

「人間のうち、男ではない方。本来卵子をつくる器官を備えている方。/出典:日本語大辞典」など体の仕組みを説明する記述が一番にくるものが多い印象。

……んん? じゃあ心はどうなるの?

IWAKAN編集部のエド・オリバーさんは、なかでも特にウィキペディアの「女性」の定義を見つけたとき、びっくりしたのだそう。

「女性(じょせい、希: γυναίκα、英: woman)は、男性と対比されるヒト(人間)の性別。/出典:フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)」

男性と対比されるヒト……? 男性でなかったら女性、ということなのでしょうか。どちらでもない人や、どちらの要素も持つ人や、体の性と性自認が違う人は、どうなるんでしょう。

モヤモヤが最高潮になり、展示室へ。

真っ暗闇の中に照らされたiPadがぽつり。

それ以外は何もなく、IWAKANチームが「もしもあなたの体がなくなったら、何をもって女性を定義しますか?」と取材した50人あまりの回答がそこかしこから響き渡ります。

ある人は哲学的に、ある人は社会の面から、ある人は悩みながらぽつりぽつりと自分の考えを述べていて、それらの声は重なり合って、全部聞き取れるわけではないけれども、人によってさまざまな考えがあることがわかります。

真ん中のiPadには、来場者が自分の考えを吹き込めて、次の日の展覧会から作品に加わると聞き、私も参加したくてずっと考えていました。

そのとき絞り出した答えは、「体がなかったら、女であることなんてどうでもいいかもしれない」というようなことでした。答えにはなっていませんが、体がなかったら性別というカテゴリに分断されることなく、いち個人であれると思ったんです。

でも帰り道、電車に乗りながらそれで良かったのか、ずっと考えていました。だって、「体がなかったら、女であることなんてどうでもいい」と言ってしまったら、最初のウィキペディアと同じく、体によって男女を定義していることになってしまいますよね。私は体の仕組みが女性ではなくても、心や性自認が女性だったら女性だと思っていたのに、変です。

ううううむ。考えれば考えるほど、難しい。この問いは、今でも頭の中をぐるぐるしています。

IWAKANチームのみなさんも言っていたように、この問いにいまのところ正解はないんだと思います。でもこの問いを、いろいろな人が考えて、その考えをシェアすることはとても重要で、その機会を与えてくれたこの展示はとても素晴らしく、心に残るものになりました。

「もしもあなたの体がなくなったら、何をもって女性を定義しますか?」

展示は終わってしまいましたが、これを読んでくださったあなたもぜひ、考えてみてください。

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Profile

金原毬子Mariko Kimbara エディター。学生時代にファッション誌編集部でのインターンや雑誌制作を経験し、編集者を志す。2017年扶桑社に入社し営業職を経て、19年『Numéro TOKYO』編集部に異動。主に人物取材やカルチャー、ライフスタイルなどの特集、本誌の新連載「開けチャクラ! バービーのモヤモヤ相談室」などを担当。音楽、ラジオ、ポッドキャストが好きで片時もヘッドフォンが手放せない。

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