2025-26年秋冬シーズンの東京ファッションウィークが3月17日より開幕。国内外から注目を集めるブランドが最新コレクションを披露するなか、FETICO(フェティコ)とHYKE(ハイク)のショーにはとりわけ高い関心が寄せられた。レトロなダンスホールを舞台に1950年代のピンナップカルチャーを現代的に再構築したFETICO。そして、有明アリーナで5年ぶりのランウェイを行い、ミニマルで本質的な美を貫いたHYKE。対照的なアプローチながらどちらも女性像のアップデートを感じさせる力強いコレクションを展開していた。
FETICOが描く現代のフェミニニティ
舟山瑛美が手がけるFETICOは、映画『Shall We ダンス?』のロケ地としても知られる昭和レトロ感あふれる優美なダンスフロア「ダンスホール新世紀」でショーを開催。コレクションミューズに選ばれたのは、1950年代のアメリカでボンテージモデルやピンナップモデルとして名を馳せたベティ・ペイジ(Bettie Page)。彼女の写真集『Queen of Curves』がインスピレーション源となり、今季のコレクションでは当時のピンナップガールのエッセンスを現代的に再構築したアイテムが数多く登場していた。
ショーは女性の芯の強さを感じさせるようなブラックのベロアドレスで幕を開けた。タイトなウエストから裾へ広がるフィット&フレアなシルエットは、1950年代のオートクチュールドレスの要素をオマージュしたクラシカルなスタイル。シンプルながらもブランドらしい女性の造形美を強調するエレガントなディテールが、今季のコレクションでは随所に垣間見えた。
今季のキールックのひとつでもあるのが、ブランド初となるレオパード柄のボディスーツやワンピースドレス。写真集の表紙で2頭のヒョウと共に微笑むベティ・ペイジの挑発的な姿をなぞるように、FETICO流のアニマルモチーフはセンシュアルかつ大胆。ブランドのシグネチャーでもあるランジェリーディテールは、ピンナップモデルたちの衣装からインスパイアされた要素を加えて、スリップドレスやベビードール風のブラウスといった日常着へと巧みに昇華。下着の持つフェティッシュさをより現代的でエレガントな表現へと変換していた。
現代でもなおカルチャーアイコンの一人として君臨するベティ・ペイジを通じて、自分のスタイルを貫く強さと美しさを表現したFETICO。昔から変わらない女性の身体性と精神性に寄り添うようなブランドスタイルは、圧倒的な世界観と共にこれからも多くの女性を魅了し続けていくはずだ。
HYKEのランウェイに見る無駄を削ぎ落とした美
ランウェイショーは5年ぶりの開催ということもあり、一際注目度の高かったHYKE。夜の有明アリーナで開催されたショーは無駄な演出などは一切なく、至ってシンプルで洋服に焦点を当てたショーだった。
カラーパレットはイエローやカーキ、ブラック、グレー、ホワイトといったモノトーンを基調に構成され、秋冬らしい落ち着いたトーンが印象的。特に絶妙なマスタードイエローやディープカーキの使い方は、重くなりがちな秋冬の装いにさりげない華やかさを加えていた。ウールやシースルーなど、異素材の掛け合わせによる奥行きのあるレイヤードスタイルも見どころの一つ。ブランドらしい過度な装飾を避けたミニマルなデザイン、そして高機能かつ洗練されたシルエットが一貫して伺えるコレクションだった。
さらに注目を集めたのが、2024SSから続くコラボレーションプロジェクト「TNFH THE NORTH FACE × HYKE(ティー エヌ エフ エイチ ザ・ノース・フェイス × ハイク)」のラストコレクション。トレイルランニングに特化した機能性のアウター、シューズなどにHYKE独自のデザインスタイルを融合させたアイテムが展開。また、「PORTER(ポーター)」とのコラボレーションアイテムも新作として登場。過去に人気を博したアーカイブモデルのフォルムを踏襲しつつ、新色を追加することで懐かしさと新鮮さが共存するラインナップとなった。
5年ぶりのランウェイショーは、その静かなインパクトと確かな進化をもってコレクションの新たな記憶を刻んでいた。派手なトレンドとは一線を画しながらも確実に時代を反映し、そして更新し続けるHYKEのこれからに、ますます期待が高まっている。
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