森川マサノリが手掛けるベイシックス(Basicks)の2025年秋冬コレクションが、秩父宮ラグビー場にて発表された。
ベイシックスは「Basics」=基本という意味に加え、「Basic」=スラングで格好悪いという意味と「Sick」=格好良いという意味を掛け合わせた造語に由来する。その名の通り、シンプルでありながらどこか引っかかりのあるユニークなアイテムを打ち出してきた。
そんなベイシックスが今季テーマとしたのは、「CMYK2025」。C(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)の三原色を意味する“CMYK”と題しているものの、混ざり合うのは単にそのカラーリングではなく、ジャンルレスなさまざまな要素。色が溶け合うように、複数のテイストを織り交ぜることに着目した。
序盤はベイシックスらしく、洗練されたスタイルに違和感のあるディテールを施したルックが次々と登場した。前掛けのようなオックスフォードシャツ、前後が逆パターンのデニム、肩紐が分かれたタンクトップ、ベルトで構成されるスカート、脱げてしまったようなパンツ……。日常のワードローブをアレンジし、大胆な遊び心を加えた。
一見複雑に見えるデザインだが、例えば前掛けのシャツは首の部分に紐を通すというアイデアから生まれたもの。そんな少しの変化がもたらす絶妙なアンバランスさに、ファッションの無限の可能性を感じる。
また今回森川がレファレンスとしたのが、ジョン・ガリアーノ初期のシャツやアン マリー べレッタのアーカイブのような、SNSに出てこないようなオフラインのアイデア。そこにあえてオンラインの情報を掛け合わせ、彼が思う「現在」を自由な発想で表現したという。
1980年代を思わせるようなニットに、スーパミニのニットパンツやサッカーボール、Y2Kテイストの大胆なファーブーツなどを合わせ、年代もテイストも違うアイテムを組み合わせた。多様なジャンルがマッシュアップされ、切り取る部分で見え方が変わってくるのが面白い。
中盤に登場したシアータイツのルックは、同じく森川が今季よりクリエイティブ・ディレクターを務めるブランド、ヒュンメルオー(Hummel 00)に登場したルックを彷彿とさせた。ブランド同士のDNAは感じさせつつも、落ち着きのあるカラー使いやパーカーとスウェットパンツをドッキングさせたトップなど、今季のベイシックスらしさ全開なルックが個人的に一番印象的だった。
ヒュンメルオー2025年秋冬コレクションより
ショーの後半には、スポーツのユニフォーム要素を取り入れたルックが登場した。スポーツといっても、野球やサッカー、カーレースと競技もさまざま。ニット素材を採用したり、ユニフォームをドッキングしたりと、ここでも予想外の組み合わせを見せる。カジュアルなアイテムでも、アイウェアブランドのアヤメ(Ayame)とコラボレーションした細フレームの眼鏡やポインテッドトゥのシューズによってモードな印象を与える。
ラストルックには、リーボック(Reebok)とタッグを組んで制作したドレスが披露された。真っ白なチュールをふんだんに使用したエレガントなドレスにリーボックのロゴマークがあしらわれ、“融合”をテーマとした本コレクションにふさわしい、斬新で優雅なラストを飾った。
ショー中には、森川が初めてランウェイショーをしたときと同じだというシガーロスの「Popplagið」が、生演奏で流れていた。ショーを振り返り「自分のなかでも、昔と違う部分が見えてきた」と話す森川。ベーシックスの原点とアップデートされた現在の色、その両方が美しく重なり合い、新たな魅力を見せたショーだった。