ワークアウトから日常のファッションシーンまで、幅広い年齢層から人気を集めるカナダ発のスポーツウェアブランド、ルルレモン(lululemon)。なかでもアイコン的存在である「Align™(アライン)」シリーズは、しなやかな肌触りと動きを邪魔しない軽やかなフィット感で多くの女性たちのライフスタイルに寄り添ってきた。今年その「アライン™」は10周年を迎え、さらなる快適さを追求した「Align No Line™(アライン ノー ライン)」を発表。フロント部分にあった縫い目をなくし、すっきりした見た目とより自由に動ける快適性とスマートさを実現した。その発売を記念し、プロダクト責任者であり「アライン™」開発者のアントニア・イアマルティーノが来日。10年間を振り返った制作秘話から現代女性たちに伝えたいワークアウトの大切さについて語ってくれた。

──ルルレモンの人気シリーズである「アライン™」を制作していた当時、どんなものを目指していましたか。
「当時からルルレモンはヨガウェアとしても知られていましたが、さらに次のステージとしてレギンスを着た時の気持ちの良い感覚やフィーリングを感じられる、新しいスタンダードを作りたいと考えていました。そこで大事なのは軽やかさ、伸縮性、ソフトさの3つを兼ね備えたアイテムを作るということ。その実現にはヨギー(ヨガをする人)の声こそが、理想のアイテムを生むためのすべての出発点でした。彼らがどう感じたいのか、どのようにインスパイアされたいのか、その声を丁寧にすくい上げることが、理想の一枚を形にする鍵だったのです」
──アントニアさんも幼少期にダンスを習っていたそうですね。
「はい。幼い頃のダンス経験は、アイテム作りの重要な要素になっています。動きやすさだけでなく、美しさやエレガンスさを引き出してくれるデザイン性にもこだわっています。私の個人的な体験とアライン™の開発が一つになったように感じていますね」
──シームレスで締め付けのない履き心地が魅力ですが、「アライン™」シリーズのアイテムを作る上で最も大変だったことはなんでしょうか。
「やはり一番難しかったのは先ほど挙げた軽やかさ、伸縮性、ソフトさの3つを兼ね備えたものでありながら、パフォーマンスのレベルを上げられるようなハイクオリティの素材作りには苦労しました。アライン™に使われているNulu™︎(ヌール)素材は18カ月間で10回以上の試作を重ね、その度に多くの人に着てもらい正直な意見を求めました。そこでまず素材ができ、次に機能性やスタイルのテストを繰り返し、V字型のバックシームは縫い目の位置を12回調整しました。身体に触れた時の感触やストレッチ性、シェイプをキープできるようなもの、締め付け感がないものなど、全てを兼ね備えたものを作るのがとても難しく試行錯誤しました」
──女性たちの生き方に寄り添ったものづくりですね。
「女性が自分の体に自信を持てること、そして心から快適だと感じられることを大切にしています。身につけることで“自分らしくいられる”感覚や、前向きな気持ちになれるようなアイテムを目指してきました。私自身もこのパンツをはくと、気分がすっと整うんです。エンパワーメントとは、日常の中で自信を持てる瞬間を積み重ねることだと思うので、そうした体験を届けられるものづくりを心がけています」
──今回の新作「アライン ノー ライン™」はフロントの縫い目を取り除いたのが特徴です。この変更にはどんな挑戦があったのでしょうか?
「フロントの縫い目をなくす、というのは実はとても大きな決断でした。それによって全体の設計を一から見直す必要があったんです。ストレッチの方向性も変わりますし、フィット感も影響を受ける。だからこそ、“縫い目がなくても、同じように自由に動けるか”という点を確かめるために、何度も試作とテストを繰り返しました。また、着用時の感触だけでなく、見た目の美しさや体のラインの見え方も重要です。機能性とデザイン性、その両方を保ちながら、新しい体験をつくることに注力しました」
──日本のワークスタイルは世界的に見てもハードだと言われています。そんな中で、心と体のバランスを保つためにできることについて、アントニアさん自身の習慣やアドバイスがあれば教えてください。
「私自身、毎朝のワークアウトを大切にしています。仕事を始める前に体を動かすことで、頭の中がクリアになり、その日をより良い気分でスタートできるんです。私は2人の娘がいて、日中は本当に忙しいですが、朝にマインドを整えておくことで、仕事でもより良い判断ができたり、クリエイティブな発想が生まれたりします。また、短い時間でもいいので、瞑想を取り入れることも心がけています。日々の中で“ウェルネス”を意識することは私にとってとても重要で、ワークアウトもミーティングの予定と同じようにカレンダーに入れるようにしています。そうすることで、後回しにせず、ちゃんと自分のケアを優先できるのでおすすめですよ」
──今後はどのようなアイテムづくりを目指していますか?これからの目標や、今を生きる女性たちへの想いについて教えてください。
「これからも、日々を忙しく生きる女性たちの声に耳を傾けながら、そっと背中を押せるような製品を届けていきたいと思っています。どんなふうに感じたいのか、どんな気持ちでその日を過ごしたいのか、それは人によってもシチュエーションによっても違っていて、だからこそ一人ひとりの“心の動き”を丁寧に観察することが大切だと感じています。
まずは、自分の心が喜ぶアクティビティを見つけてほしい。それが、自分自身との信頼関係を築く最初のステップになると思うんです。今の時代、女性たちは本当にたくさんのプレッシャーの中にいますよね。そんな時こそ、自分を優しく包み込むような時間を持ってほしい。呼吸を整えるように、マインドも整えること、自分とつながること……。どんな時でも、自分に対して温かくいられるように。そんな想いを込めてこれからも製品をつくっていきたいと思っています」
lululemon
URL/www.lululemon.co.jp/
Interview & Text: Saki Shibata Edit: Yukiko Shinto